日本は火山が多い。では世界で何番目?
日本は火山の多い国だ。温泉街や山の風景を思い浮かべれば、その言葉はすんなり入ってくる。けれど「世界で一番多い国は?」と聞かれると、急に地図を広げたくなる。日本か、インドネシアか。それとも国土の広いアメリカだろうか。
スミソニアン博物館の火山データベースを開くと、面白い答えが返ってくる。長い期間の噴火記録を持つ火山を数えれば米国が先頭に立つ。一方、同じ表で活動の期間を短くすると、インドネシアが前へ出る。資料を取り替えたわけではない。一枚の表で、読む列を変えただけだ。
今回はGlobal Volcanism Programが公表する、二〇二六年三月三十一日時点の国別表を辿る。最初に過去約一万二千年を見渡し、次に一九六〇年以降へ時間の窓を縮める。火山の「多さ」が、数える時間によってどう姿を変えるのか。日本から眺めていた火山の風景を、世界の記録へつないでみよう。
約一万二千年の名簿では、米国、日本、ロシア
最初の図は、完新世と呼ばれる過去約一万二千年の活動を手掛かりにした火山数だ。米国は百六十五、日本は百十六、ロシアは百六、インドネシアは百一、チリは九十。表の先頭だけでも、太平洋の両側にまたがる国が並ぶ。
米国と日本の差は四十九。日本とインドネシアの差は十五しかない。国土の大きさをそのまま順位へ置き換えられないところが、この名簿の第一の面白さだ。国が広ければ、そのどこでも同じように火山が分布している、というわけではない。
続く国を読むと、エチオピア、パプアニューギニア、エクアドル、アイスランド、アルゼンチンが現れる。火山の世界は、日本やハワイのような身近な連想よりずっと広い。エチオピアは四十九、アイスランドは三十五。海に囲まれた島国だけの現象ではないことも、この並びから見えてくる。
図では原表の上位十か国を載せた。棒の長さは山の高さでも噴火の激しさでもなく、条件に合った火山の個数である。同じ高さの山を選んだ比較ではないので、風景写真で見た雄大さとは別の順位になる。

グラフの数値を表で読む
| 国・年 | 値 |
|---|---|
| 米国 | 165 |
| 日本 | 116 |
| ロシア | 106 |
| インドネシア | 101 |
| チリ | 90 |
| エチオピア | 49 |
| パプアニューギニア | 39 |
| エクアドル | 36 |
| アイスランド | 35 |
| アルゼンチン | 32 |
一九六〇年からの活動に絞ると、先頭が入れ替わる
今度は同じ原表の「一九六〇年以降に活動」の列を見る。先ほどの上位五か国では、インドネシアが五十五、日本が四十、米国が三十九、ロシアが二十七、チリが十九だ。長い期間では四番目だったインドネシアが、こちらでは先頭へ出る。
日本と米国は一個差になる。前の図では米国の棒が日本よりかなり長かったのに、最近の活動という条件ではほぼ並ぶ。日本の火山が増えたり米国の火山が消えたりしたのではない。名簿に載る火山のうち、選んだ期間に活動したものだけを拾い直した結果である。
地球の時間に比べれば、一九六〇年からの期間はごく短い。その短い窓から見える顔ぶれと、一万年以上をまとめた顔ぶれは一致しなくてよい。山の数を一つだけ覚えるより、二つの列を行き来したほうが、火山の活動には異なる時間の尺度があると実感できる。
二つ目の図も噴火の回数ではなく、活動した火山の個数を示す。一つの火山が繰り返し噴火しても、この国別比較では何度も別の火山として足さない。この違いを押さえると、ニュースで何度も耳にする山と、名簿の長さとの関係も整理しやすい。

グラフの数値を表で読む
| 国・年 | 値 |
|---|---|
| インドネシア | 55 |
| 日本 | 40 |
| 米国 | 39 |
| ロシア | 27 |
| チリ | 19 |
二つの棒を割ると、もう一つの違いが見える
長い期間の火山数を分母にして、最近活動した火山がどれくらい含まれるかを計算してみよう。インドネシアは五十五を百一で割って約五十四パーセント。日本は四十を百十六で割って約三十四パーセント。米国は三十九を百六十五で割って約二十四パーセントになる。ロシアは約二十五パーセント、チリは約二十一パーセントだ。
これは原表からこの記事で計算した割合で、今後の噴火確率を表す数値ではない。長い名簿の中に、最近の期間でも活動が記録された火山がどれくらいあるか、という構成比である。
この計算をすると、インドネシアの棒が最近の活動で長くなる理由を、別の角度から言い直せる。最初の名簿そのものが最大なのではなく、その名簿の中で最近の活動にも当てはまる火山が多いのだ。一方、米国は長い期間の名簿が大きい。二つの国が違う列で先頭に立つことは、矛盾ではない。
国ごとの総数だけを眺めていたときには見えなかった違いが、同じ数字を割り算に持ち替えるだけで現れる。新しい調査結果を足さなくても、記録の組み合わせ方で問いを増やせるところが、こうしたデータベースを歩く楽しさでもある。
上位の外にも、並び替わる国がある
原表をさらに下まで読むと、カナダは長い期間の火山数が二十四で、一九六〇年以降の活動はゼロ。ニュージーランドとフィリピンは長い期間ではどちらも二十三だが、最近の活動では八と六になる。トンガは二十一に対して九だ。上位五か国だけで起きていたように見えた違いが、他の国の組み合わせにも見つかる。
カナダのゼロは「火山が一つもない」という意味ではない。二十四という長い期間の名簿と、短い期間のゼロは両立する。反対に、トンガは総数がニュージーランドより少なくても、最近の活動に絞ると一つ多い。同じ表の二つの列を見比べるだけで、ゼロの意味も、同数の意味も変わってくる。
火山の数が多い国を探す遊びから始めて、今度は総数が近い二つの国を選んでみる。そこから活動の期間を切り替えると、似ていたはずの棒が違う長さになる。表の一位だけを取り出すと見落とす、小さな発見である。
一八〇〇年から見ると、二つの時間の間がつながる
原表には、さらに「一八〇〇年以降に活動」という列もある。米国六十三、日本六十一、ロシア四十六、インドネシア七十一、チリ三十五。約一万二千年と一九六〇年以降の中間に、もう一枚の窓を置けるわけだ。
この期間でも、五か国の中ではインドネシアが最も多い。日本と米国は六十一対六十三で近く、最近の列では四十対三十九へ入れ替わる。日本と米国の小さな順位差を、国の性質を決定づける大きな差として読むより、期間を変えると入れ替わるほど近い、と読んだほうが記録の姿に合っている。
一八〇〇年からの数を一九六〇年からの数と足してはいけない。後者の期間は前者に含まれている。最近の活動が両方の列に登場するため、合計すると同じ火山を重ねて数えることになる。
逆に、前者から後者を引くと、一八〇〇年以降には活動したが一九六〇年以降の列には入らない火山の数になる。米国なら二十四、日本なら二十一だ。ただし、それを「その時期に一回だけ噴火した火山」とは呼べない。表は期間への該当を示しているのであって、個々の噴火回数を示しているわけではないからだ。
火山の地図に、国境とは別の線を引く
どうして遠く離れた国々が同じ表の上位に並ぶのだろう。米国地質調査所の解説では、多くの火山は地球表面のプレート境界付近に分布する。政治の地図では別々の国でも、地球の表面を動く大きな板の縁に沿って眺めれば、つながった現象として見えてくる。
プレートが近づく場所と離れる場所では、地下の過程も地形も同じではない。それでも、火山が国土へ均等に撒かれているのではなく、地球の構造と結びついた分布を持つことが、国別の数に偏りがある背景になる。
一方で、プレートの境界だけをなぞれば全て説明できるわけでもない。ハワイのようにプレート内部にできる火山もある。国の棒グラフで違いを見つけた後に分布図へ戻ると、同じ国の中にも複数の地学的な舞台があると気づく。
米国という名前から大都市や本土の中央部を思い浮かべていた人には、広い海域や島々を含む地図を開き直すこと自体が発見になるだろう。統計で一つの国として束ねられた場所を、地図の上でほどいていく。国名の印象と地球の実際の広がりとの間を往復できるのが、この比較の醍醐味だ。
山頂を数える? 噴火口を数える? 名簿の一行を数える?
旅行先で火山の風景を見ると、山頂や噴火口がいくつも並んで見えることがある。目に見える峰を一つずつ指さして数える作業と、専門機関が作った火山の名簿を集計する作業は、出発点が違う。
この記事で数えている単位は、あくまでデータベースの国別表に採用された火山である。写真に写る盛り上がりの個数へ読み替えたり、地図上の山名を独自に足したりはしていない。同じ単位に揃えてこそ、離れた国を一つの図で比べられる。
もう一つ気をつけたいのが、「噴火が多い」と「火山が多い」の言い分けだ。仮に二つの地域に活動した火山が一つずつあったとして、一方は何度も噴火し、もう一方は一度だけだったとする。火山の数なら同じ一つだが、噴火イベントの数なら差がつく。
この仮の例を国別表に重ねると、表が得意な問いが分かる。活動の記録を持つ場所がどれくらいあるかは比較できるが、ニュースになった噴火の総回数や、煙の上がっていた日数は別の記録が必要だ。数字の名前を少し丁寧に呼ぶだけで、次に開くべき帳簿が変わる。
国別の合計が、世界の合計とは限らない
原表には海外領土などを含める扱いがあり、共有される火山や係争対象の火山を複数の国に数える場合もある。このため、各国の数字をすべて足したものを、そのまま重複のない世界の火山総数とすることはできない。
たとえば、一つの対象が二つの国の欄に登場する集計を考えれば分かりやすい。国別には両方に載っていることが正しくても、世界全体で物そのものを数えたいときには、一度にまとめる必要がある。名簿の所属と、対象の個体数は別の問題なのだ。
これも火山特有の難解な注意事項というより、世界を国ごとに区切って数えるときの面白さだ。地球に先に存在したものへ、後から人間が引いた境界を重ねる。その接点に、表の脚注が生まれる。
今回の二つの図では同じ機関の同じ国別表を使い、領域の扱いを途中で変更していない。日本だけ国内の別機関の数に入れ替えたり、他国だけ違う時点の数字を混ぜたりせず、表の中の列を移動する形にした。こうすると、順位の変化が集計条件の取り替えによるものなのか、対象期間の違いによるものなのかを分けて楽しめる。
多いという記録と、目の前の活動は別の時間にある
一万年以上の名簿は、今朝どの火山が噴火したかを伝えるためのものではない。同じように、一九六〇年以降に活動したという欄も、そこに載る火山が今すべて噴火中だという意味ではない。長期間の履歴と、ある瞬間の状態には、それぞれ別の役割がある。
長い履歴の面白さは、その日たまたまニュースになった場所だけでは見えない広がりを見せてくれることだ。最近耳にした火山の国名から表に入り、別の大陸へ目を移し、さらに期間を変える。そうすると、記憶に残った一つの出来事が世界の中のどこに位置するのかを考えられる。
ただし個々の山の危険度や被害の大きさまで、この二つのグラフから順番をつけることはできない。活動した火山の個数には、噴火の規模や人々の暮らす場所まで折り込まれていないからだ。ここで辿ったのは、世界の火山活動が名簿に残した足跡である。
最初の問いへ戻ろう。火山が一番多い国は、どこか。今回の長い期間の表なら米国、最近の活動を比べる列ならインドネシアが前へ出る。そして日本は、どちらの見方でも数多くの火山を持つ国として現れた。「いつからの記録?」と一言添えるだけで、単純な順位の質問が、地球の時間を眺める入口に変わる。
辿った記録
データ取得・確認:2026年10月1日。比較は図に記した対象年・取得版による。本文を全面的に書き直し、図表と出典を更新しました。


