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宇宙を回る4万個のうち、働いている衛星はどれくらい?

地球を回る追跡対象は約4万個、そのうち稼働中の衛星は約1万1千個。ESAの記録から、衛星と破片、追跡できる物体と推計される物体を数え分ける。

公開日
2026.10.01
更新日
2026.10.01
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宇宙を回る物体、全部人工衛星?働く衛星と宇宙ごみの違い

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地球の周りの点は、全部が働く衛星なのか

夜空を横切る光の点や、ロケットの打ち上げ映像を見ると、その先で働く人工衛星を想像する。では地球の周りを回る人工物を数えたら、その何割が今も仕事をしているのだろう。

欧州宇宙機関、ESAの2025年宇宙環境報告では、宇宙監視網が追跡する物体はおよそ四万個、そのうち稼働中のペイロードはおよそ一万一千個と説明されている。ここでペイロードとは、ロケットの上段などと区別される、運ばれた機器の側の分類だ。

二つの数字を比べるだけで、宇宙の点を全部「現役の衛星」と呼ぶと、実際の帳簿と大きくずれることが分かる。さらに小さな破片へ目を向けると、数は桁を変えて増える。今回は2024年末までのデータを扱うこの報告を基準に、追跡される物体、働いている物体、推計される小さな物体を数え分けてみる。

四万個のうち一万一千個、およそ四分の一強

最初の図は追跡物体の総数と、その中の稼働中のペイロードを並べている。一万一千を四万で割ると約二十七・五パーセント。概数同士の計算なので、小数点以下まで精密な調査結果というより、およそ四分の一強という規模感で読むのがよい。

残りの差は約二万九千個になる。ただし、これを全部「故障した人工衛星」と呼ぶのも正しくない。追跡の名簿には、ロケット由来の物体や分離・破壊で生まれた破片など、異なる種類が混ざっているからだ。

二つの棒は別々の集団を示しているわけではない。稼働中の一万一千個は、四万個の内側に含まれる。だから二本を足して五万一千個にしてはいけない。全体とその内訳を、同じ長さの物差しで示した図である。

同じ軌道上の点でも、現在働いているのか、仕事を終えたのか、そもそも衛星本体ではないのかで意味が違う。打ち上げの成功を数える帳簿から、軌道に残った物体の帳簿へ移ると、人類の宇宙活動が積み重なった姿が見えてくる。

追跡している物体と、稼働中の物体。物体数(概数)。数値は直後の表でも確認できます。
図1 追跡している物体と、稼働中の物体。ESA 2025報告。2024年末までのデータ。下段は上段の内数で、合計しない。
グラフの数値を表で読む
国・年値
追跡物体の総数40,000
うち稼働中のペイロード11,000

一センチまで視野に入れると、百万個を超える

二つ目の図では、個別に追跡している名簿から、モデルを使ったデブリの推計へ視点を移す。同報告は、十センチを超えるデブリを五万個超、一センチを超えるデブリを百二十万個超と見積もっている。

図の棒は、それぞれの「超える」という説明に合わせた下限の目安を描いたものだ。正確に五万個、百二十万個と確定した個数ではない。小さな破片まで対象を広げると、個別追跡の名簿よりずっと大きな世界が現れることを見てほしい。

ここでも二つの棒は足せない。一センチ超という集団には、十センチ超の物体も含まれている。別々の大きさの箱を並べた図ではなく、下限の大きさを変えて数えた、重なりのある二つの集団である。

また、最初の図は稼働中の物体も含む追跡名簿、二つ目はデブリの推計であり、集計の方法も対象も違う。「四万から五万へ一年で増えた」という時系列ではない。同じ時点の空でも、どこまで小さな物体を含めるか、どう数えるかによって、数字の桁が変わるのだ。

サイズを小さくすると、推計数が増える。デブリ物体数の下限目安。数値は直後の表でも確認できます。
図2 サイズを小さくすると、推計数が増える。ESAの推計はそれぞれ5万超、120万超。グラフは下限値で、1cm超は10cm超を含む。追跡実数ではない。
グラフの数値を表で読む
国・年値
10cm超50,000
1cm超1,200,000

見つけることと、追跡し続けることは違う

地上から何かを一度観測したことと、その物体を継続して識別し、軌道を更新していくことは同じではない。追跡の名簿は、空に点が写った回数を単純に足したものではなく、同じ物体を複数の観測から結びつける仕事の上に成り立つ。

ESAの説明では、宇宙物体の監視にはレーダーや光学観測が使われる。低い軌道と遠い軌道では、観測の条件も違う。物体が小さくなるほど、また観測する場所や距離が変わるほど、同じように名簿へ載せられるわけではない。

一般的な目安として、ESAは低軌道のカタログでは十センチ程度より大きい物体、静止軌道付近では数十センチから一メートル程度より大きい物体を扱うと説明している。これはすべての装置に共通する絶対的な境界線ではなく、観測可能性の違いを理解する目安だ。

同じ「宇宙にある物体」でも、地球の周囲をどれほど遠く回るかで、地上からの見つけやすさが変わる。四万個という数は、存在するすべての人工物に名札を付け終えたという意味ではなく、観測網が継続して扱う帳簿の大きさなのである。

名簿にない小さな物体は、どう数えるのか

一つずつ追えないなら、何も分からないのだろうか。そうではない。ESAは、専用の観測活動やモデルを使って、個別の追跡カタログより小さな物体の集団も調べている。

たとえば観測できる範囲で得られた情報を、物体の大きさや軌道などの条件と組み合わせ、全体の環境を推計する。ここで得られる数は、一個ずつ名前と軌道を記した一覧の行数とは性質が違う。名簿で数える部分と、集団として推計する部分があるわけだ。

地球の周囲に点を散りばめたイメージ図を見ると、すべての点の位置が同じ精度で分かっているように感じるかもしれない。しかし個別に追える物体と、分布や数を推定している物体は分けて考える必要がある。

図の出典に「推計」と書くのは、数字を弱く見せるためではない。どんな観測と計算からその値ができているかを示すためだ。直接に数えられるものだけを宇宙の全体と見なさず、その外側にある小さな物体へも調べ方を広げる。観測のログには、見えている範囲の境界も記録されている。

帰ってきた機器の傷も、宇宙の記録になる

小さな物体を調べる手掛かりは、地上からの観測だけではない。ESAは、宇宙から回収された機器の表面に残る衝突痕も、小さな粒子の環境を知るために分析してきたと説明している。例として挙げられるのは、回収された衛星やハッブル宇宙望遠鏡の太陽電池パネルだ。

機器の表面についた傷は、単なる使用感ではなく、宇宙に置かれていた期間に何が起きたかを示す物理的な記録になる。遠くの点を追う望遠鏡のログと、手元へ戻った材料の傷のログが、別の方向から同じ環境に迫るわけだ。

もちろん傷一つから、衝突した物体のすべての過去が分かるわけではない。それでも、個別の軌道を追跡できないほど小さいものについて、存在や影響を調べるための別の窓になる。

宇宙観測と聞くと遠くへ目を向ける行為を想像しやすいが、帰還した物の表面を近くで調べることも観測である。地球の周囲に何があるかという問いには、空を見上げる装置と、持ち帰った物を調べる装置の両方が関わっている。

二つの衛星が、何千もの破片の記録になる

物体の数は、打ち上げた衛星の数だけでは増減しない。軌道上で物体が壊れれば、一つだったものが多数の破片になる。新しいロケットを一本も打ち上げなくても、数える対象が増える場合があるのだ。

具体的な記録として、ESAは2009年のイリジウム33とコスモス2251の衝突を紹介している。二つの衛星が破壊され、多数の破片が発生し、その後の説明では追跡された破片が2,200個を超えたとしている。

ここで二千個以上という値は、新しい衛星が二千機以上打ち上げられたことを意味しない。同じ出来事を「衝突の件数」で数えれば一件でも、「追跡される破片」で数えれば非常に多くなる。事件の数と物体の数では、増え方の仕組みが違う。

この事例の破片数を、そのまま2025年報告の名簿へ足すこともしない。古い出来事から生まれた物体は、後のカタログに含まれる場合があり、その間に大気圏へ戻ったものもありうる。過去の発生数と、ある時点で残っている数を分けることで、宇宙の履歴を重複なく読める。

一年の打ち上げ数と、軌道に残る数を分ける

打ち上げの年間件数は、その年に起きた出来事を数える。軌道上の物体数は、ある時点で残っているものを数える。片方は一年の出入りの記録、もう片方は過去の出入りが積み上がった名簿だ。

仮に、ある期間に物体が百個加わり、三十個が軌道を離れたなら、ほかに変化がなければ差し引き七十個増える。ここへ破砕で生じる破片や観測・分類の更新が加われば、変化はさらに複雑になる。この例は実測値ではなく、数がどうつながるかを考えるための仮の帳簿である。

しかも、一回の打ち上げで運ばれる衛星が一機だけとは限らない。ロケットの打ち上げ回数と、投入された機器の個数も一致しない。そのためロケットのニュースを一年分数えるだけでは、軌道上の名簿を再現できない。

宇宙開発の記録を辿るときは、打ち上げ、稼働、破砕、軌道からの退出を別々の項目として見ると分かりやすい。新しい活動の勢いを知る帳簿と、過去の活動が空間に残したものを知る帳簿は、つながっていても同じものではない。

小さな破片が多くても、重さの割合は別の問い

物体を一個ずつ数えると、細かく分かれた破片の存在感が大きくなる。だが個数が多いことと、質量の合計が大きいことは同じではない。大きな機器一つと小さな破片一つは、この数え方ではどちらも一個である。

たとえば一つの物体が百個の破片に分かれたという仮の場面を考えよう。ほかへの出入りがなければ、物質が百倍に増えたわけではない。それでも個数は百倍になる。数を追うグラフと質量を追うグラフが違う形になるのは、数えている単位が違うためだ。

また大きさの下限を替えると、どの破片を集計へ入れるかも変わる。十センチ超だけを見る名簿と、一センチ超まで見る推計では、同じ破砕の出来事から拾う範囲が異なる。

今回の二つの図は個数の比較に揃えた。重さや衝突したときの影響をそのまま表すグラフではない。宇宙の「多い」を知るには、機数、破片数、質量、軌道上の分布という複数の物差しがある。どれか一つを別の物差しへ無意識に置き換えないだけで、ニュースの数字をかなり整理して読める。

同じ四万個でも、どこを回るかで空の見え方は違う

地球の周囲は、一枚の平らな道路ではない。物体は異なる高さや向きの軌道を回る。総数だけでは、どの領域にどれくらい集中しているかまでは分からない。

ESAの2025年報告も、総数の図とは別に、軌道の高さごとの分布を示している。地球から離れる距離を横に広げて見ると、特定の高さに集まる衛星群など、総数の一本の棒には入らない形が現れる。

都市の人口だけでは駅前と郊外の混み方が分からないのと少し似ている。ただし宇宙では三次元の位置に加えて動く方向や時刻も重要なので、単純な地上の道路模型へ置き換えられるわけではない。総数は環境の規模を知る入口であり、分布を調べる作業の代わりにはならないのだ。

ここから先を知りたければ、個数を軌道の高さや物体の種類に分けた記録へ進める。打ち上げの瞬間には見えない、その後どこに何が残ったかという履歴が、宇宙の使われ方を立体的に見せてくれる。

宇宙の帳簿には、三つの「何個」がある

ここまで辿った数は、大きく三つに分かれる。個別に追跡されている物体の数、その中で働いている機器の数、そして小さな物体も含めて推計した数だ。どれも地球の周囲についての数字だが、同じ質問への答えではない。

最初の図からは、追跡物体の中で稼働中のペイロードはおよそ四分の一強だと分かった。二つ目の図からは、一センチを超える小さなデブリまで含めると、推計が百万個を超える規模になると分かった。二つを一緒に見ることで、現役の人工衛星だけでは描けない空の姿が浮かぶ。

今回の数値は2025年版報告のスナップショットであり、今日の実況値ではない。後の年の報告と比べるときも、個別追跡か推計か、大きさの条件は何かを揃える必要がある。違う帳簿の数字をつないでも、増減の履歴にはならないからだ。

ロケットが空へ消えた後にも、機器は働き、役目を終え、場合によっては破片となり、軌道から去る。地球の周囲の名簿は、その一連の活動が残したログである。何機打ち上げたかに加えて、何が残り、何が働いているかを数えると、人類が宇宙を使ってきた時間の厚みが見えてくる。

辿った記録

データ取得・確認:2026年10月1日。比較は図に記した対象年・取得版による。本文を全面的に書き直し、図表と出典を更新しました。

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