環境 / DATA STORY

森林はどの国で減っているのか?衛星データで見る地球の変化

森林減少という言葉を聞くと、まずブラジルの熱帯雨林を思い浮かべる人が多い。実際それは間違っていない。だが世界の森林変化を地図で追うと、減っている場所はアマゾンだけではなく、アフリカや東南アジアにも広く伸びている。

公開日
2026.05.05
更新日
2026.07.30
森林はどの国で減っているのか?衛星データで見る地球の変化の記事アイキャッチ
記事アイキャッチ

森林減少という言葉を聞くと、まずブラジルの熱帯雨林を思い浮かべる人が多い。実際それは間違っていない。だが世界の森林変化を地図で追うと、減っている場所はアマゾンだけではなく、アフリカや東南アジアにも広く伸びている。

しかも同じ時期に、森林を増やしている国もある。世界の森林問題は単純な一直線ではなく、農地拡大で削られる地域と、植林や回復で増える地域が同時に存在する。

この記事でわかること:森林が大きく減っている国はどこか。ブラジル以外にどの地域が削られているのか。さらに中国やインドのように森林を増やす国と何が違うのかを整理する。

まず前提を整理する

ここで使うのは FAO の Global Forest Resources Assessment をもとに Our World in Data が整理した森林面積の年次データだ。見る指標は「森林面積の年間純変化」で、植林や自然回復も含めたうえで最終的にどれだけ増減したかを示す。

純減は森林が減ったこと、純増は植林や自然回復を含めて森林面積が増えたことを意味する。つまり伐採量そのものではなく、最終的な差し引き結果を見る指標だ。

この違いは重要だ。森林減少は木を切った量だけでは決まらない。農地や牧場への転換、火災、違法伐採、植林、保全政策まで含めて、最終的に面積がどう動いたかで景色が変わる。

データで現状を見る

2025年の年間純減で最も大きいのはブラジルで、約325.6万ヘクタールの減少だった。これは2位のアンゴラ約51.0万ヘクタールを大きく引き離す水準で、依然としてアマゾンの存在感が突出している。

その後ろにはタンザニア46.9万ヘクタール、カンボジア30.9万ヘクタール、ペルー29.9万ヘクタール、ミャンマー29.0万ヘクタール、コンゴ民28.3万ヘクタールが続く。南米、アフリカ、東南アジアに減少地域が分散しているのがわかる。

ポイントは「森林減少はブラジルだけの問題ではない」ということだ。農地拡大、燃料用伐採、インフラ開発が重なる地域で、同時多発的に森林が削られている。

この対比はかなり示唆的だ。ブラジル、アンゴラ、タンザニア、カンボジアは大幅な純減。一方で中国やインドは植林政策や土地管理の効果で純増になっている。インドネシアも1990年の大幅減少国だったが、2025年時点では小幅ながら純増へ転じた。

森林の未来は「木を切る国」と「守る国」に固定されていない。政策と土地利用の転換で、同じ国でも数十年単位で方向が変わりうる。

なぜそうなるのか

最大の要因は農地拡大だ。牛肉、木材、パーム油、大豆、燃料用木材、都市拡張が森林を押し下げる。特に熱帯地域では、道路や採掘が入ると、その周辺で農地転換が連鎖しやすい。

逆に純増国では、植林、保全政策、違法伐採の抑制、薪依存の低下が効く。もちろん純増だから生態系が完全に守られているとは限らない。天然林の喪失を人工林が埋めている場合もあるため、「増えた」だけでは質まではわからない。

森林面積の純増は必ずしも生物多様性の改善を意味しない。天然林が減って人工林が増えているだけなら、生態系の豊かさは別問題として残る。

この点はランキングだけでは見えにくい。面積が戻っていても、生態系としての厚みや多様性が同じとは限らないからだ。森林政策を評価するときは、単なる本数や面積だけでなく、どの種類の森がどこで残っているかまで見ないと、実態を誤解しやすい。

考察:森林減少は自然破壊というより土地利用の優先順位が可視化された結果でもある

森林減少は環境問題であると同時に、土地の奪い合いの問題でもある。人口が増え、所得が上がり、食肉や建材の需要が伸びると、森林はしばしば一番大きな予備地として削られる。

だから対策も単なる植林キャンペーンでは足りない。農地の生産性向上、違法伐採の監視、道路計画の見直し、燃料転換、サプライチェーン規制まで含めて初めて効いてくる。森林を守る政策は、実は農業とエネルギー政策の一部でもある。気候変動がこのまま進むと何が起きるかを見た記事とつなげると、森林問題が温暖化の抑制策でもあることが分かりやすくなります。

「植えれば戻る」と考えるより、「なぜその土地で木が切られるのか」を見るほうが実態に近い。森林減少はいつも需要側の経済とつながっている。

未来予測

今後の分岐点は、熱帯地域で農地拡大をどこまで抑えられるかだ。ブラジルやコンゴ盆地が減少を止められなければ、気候変動と生物多様性の両面で打撃はかなり大きい。CO2排出量が多い国はどこかを見た記事と合わせると、森林が炭素吸収源でもあることの重みが見えやすくなります。

逆にインドネシアのように減少ペースを弱めた例が増えれば、森林政策はまだ効くと示せる。将来の焦点は、単なる面積回復だけでなく、天然林を残しながら食料需要をどう吸収するかへ移っていく。

森林の未来は木を何本植えるかだけでは決まらない。農業、食生活、エネルギー、貿易の選び方が、そのまま森の境界線を動かしている。

まとめ

・2025年の年間純減ではブラジルが約325.6万ヘクタールで突出している
・減少地域は南米だけでなく、アフリカや東南アジアにも広がっている
・一方で中国、ロシア、インド、インドネシアなど純増へ向かう国もある
・森林問題は伐採だけでなく、農地拡大と土地利用の設計の問題として読むほうがわかりやすい

森林は静かに消えるが、データで見るとその動きはかなりはっきりしている。どこで森が削られ、どこで回復しているのかを追うと、地球環境の変化は自然現象というより、かなり人間の経済活動そのものに近い。

データソース:Our World in Data「Annual change in forest area」FAO「Global Forest Resources Assessment 2025」

ABOUT HUMANLOG

数字の奥にある、
人間の営みを見る。

人類ログは、世界の変化を一次資料と公開データから読み解く独立メディアです。結論だけでなく、出典と読み方まで開いていきます。

一次資料世界を比較読み方を解説
© 2026 HUMANLOG