大きな地震が続けて報じられると「世界の地震は増えているのではないか」と感じやすい。SNSや速報アプリで遠い国の揺れまで知る時代になり、体感するニュースの量は確実に増えた。
では地球そのものの活動は活発化しているのか。USGS(米国地質調査所)の世界地震カタログを使い、2000年から2025年までのM7以上の地震を数えて確かめた。
先に結論を言うと、2000〜2025年のM7以上に、右肩上がりの増加は見えない。一方で地震のニュースが増えたように感じることには、観測と情報流通の変化という理由がある。
世界では毎年どれほど地震が起きるのか
USGSは、世界では毎年数百万回の地震が起きていると推定している。多くは小さすぎるか、人の少ない場所で起きるため観測されない。USGSのNational Earthquake Information Centerが位置を特定して公表する地震は、現在では年間およそ3万件だ。
ただし規模が大きくなるほど件数は急減する。USGSがまとめた2000〜2021年の世界統計を平均すると、M5.0〜5.9は年約1613回、M6.0〜6.9は約137回、M7.0〜7.9は約14回、M8以上は約1回だった。
M7以上は26年間で増えているのか
USGS Earthquake Catalog APIから各年のM7以上を集計すると、2000〜2025年の平均は年14.9回だった。最も多い2010年は24回、最も少ない2017年は7回で、年ごとの振れは大きい。
しかし前半13年の平均は15.6回、後半13年は14.2回だった。区間の切り方だけで地球活動を断定することはできないが、少なくともこの26年間を「一貫して増え続けた」と説明するデータではない。
M7以上は年7〜24回の範囲で大きく変動した。ただし5年移動平均は長期的な上昇線を描いていない。
なぜ「増えている」と感じるのか
第一の理由は観測だ。地震計ネットワークが密になり、遠隔地の小さな地震までカタログに入るようになった。小規模地震の件数を長期比較するときは、地球活動だけでなく観測能力の変化も混ざる。そこでこの記事では、世界規模で捕捉漏れが起こりにくいM7以上を比較軸にした。
第二の理由は情報流通だ。かつては被害の大きな地震だけが国際ニュースになった。今は震源、規模、津波情報が数分で世界へ届く。地震が増えたのではなく、私たちが知る地震が増えた面がある。
第三の理由は人口と都市の集中だ。地震の規模が同じでも、人口密集地や脆弱な建物の近くで起きれば被害と報道量は大きくなる。世界の都市化率を見た記事や2100年までの人口分布を見た記事と重ねると、災害リスクは地震回数だけで決まらないことがわかる。
巨大地震は「少ないから無視できる」わけではない
2000〜2025年にM8以上は合計28回、平均すればほぼ年1回だった。頻度は低いが、M8はM7の約32倍のエネルギーを放出する。発生場所、深さ、地盤、建物の耐震性、津波の有無が重なると被害は急激に拡大する。
世界の自然災害による経済損失を比べた記事で見たように、損失額は自然現象の強さだけでなく、そこにどれだけ人と資産が集まっているかにも左右される。だから見るべきなのは「今年は何回起きたか」だけではない。
予知と早期警報はまったく違う
USGSは、日時・場所・規模をそろえて大地震を事前に予知する方法は現在ないとしている。長期的な発生確率や大地震後の余震確率は計算できるが、「何月何日にどこでMいくつ」という予知とは別物だ。
地震早期警報は、地震が始まった後に先に届くP波を検知し、強い揺れが到達する前に知らせる仕組みである。震源に近い地域では猶予がほとんどない場合もある。それでも列車を減速する、設備を停止する、人が身を守るといった行動には意味がある。
「予知できない」と「備えられない」は同じではない。耐震化、ハザード評価、早期警報、避難計画は予知なしでも被害を減らせる。
まとめ
・世界では数百万回の地震が起きると推定されるが、多くは小さく未検出
・2000〜2025年のM7以上は年平均14.9回で、明確な右肩上がりではない
・M8以上は26年間で28回と少ないが、1回あたりのエネルギーは桁違い
・ニュース量、観測網、都市への人口集中が「増えた」という体感を強める
・大地震の日時、場所、規模をそろえた予知はできないが、警報と備えはできる
地震の脅威を正しく見るには、直近のニュース件数ではなく、規模別の長期データと社会側の被害条件を分けて考える必要がある。
データソース:USGS「Lists, Maps, and Statistics」、USGS Earthquake Catalog API、USGS「National Earthquake Information Center」、USGS「Earthquake Magnitude, Energy Release, and Shaking Intensity」、USGS「Early warning, forecasts, probabilities, and prediction」
