プラスチックごみの話になると、つい海に浮かぶごみの映像から考え始めてしまう。だが本当に見ないといけないのは、どの国がたくさん使い、どの国で管理が崩れ、どこで環境へ漏れているのかという流れ全体だ。
実はこの3つは同じではない。豊かな国ほど1人あたりの消費は大きいが、汚染量までそのまま最大とは限らない。逆に排出量が中位でも、回収や処理が弱ければ環境中への流出は一気に増える。
まず前提を整理する
ここで見る指標は2つある。1つは1人あたりのプラスチックごみ排出量。もう1つは、焼却や不適切な投棄を含めた1人あたりのプラスチック汚染量だ。
重要なのは、この2つが同じではないことだ。Our World in Data がまとめた Cottom らの2024年データでは、排出量は消費の厚みを、汚染量は回収や処理の弱さまで含んだ結果を見ている。
さらに OECD の Global Plastics Outlook によると、2019年の世界のプラスチックごみ353百万トンのうち、最終的に再利用へ回ったのは9%しかない。19%は焼却、ほぼ50%は衛生埋立、残る22%は不適切処理や漏出だった。問題は消費だけでなく、後ろ側の処理能力にある。
データで現状を見る
まず「多く出す国」を見ると、上位には高所得国が並ぶ。2020年の1人あたり排出量では、アメリカが74.3kg、フランスが66.4kg、イギリスが54.8kg、ドイツが49.5kg、日本が47.0kgだった。
一方で中国は29.0kg、インドは19.9kg、ナイジェリアは27.0kgにとどまる。人口の大きい国ほど総量では目立ちやすいが、1人あたりで見ると豊かな消費社会のほうがはるかに多くのプラスチックを使っている。
ポイントは「海を汚している国」と「たくさん消費している国」を同じものとして扱わないことだ。高所得国はまず使用量の多さで強く目立つ。
| 国 | 1人あたり排出量 | 1人あたり汚染量 |
|---|---|---|
| アメリカ | 74.3kg | 0.14kg |
| フランス | 66.4kg | 0.14kg |
| ドイツ | 49.5kg | 0.09kg |
| 日本 | 47.0kg | 0.05kg |
| 中国 | 29.0kg | 1.97kg |
| インド | 19.9kg | 6.64kg |
この表だけでも構図はかなりはっきりしている。豊かな国は多く使うが、管理が比較的効いているため汚染量は低い。逆に中低所得国は消費量が少なくても、回収されない、あるいは処理段階で漏れるため、環境負荷が大きくなりやすい。
世界比較で見るとどうか
下の散布図で横軸を排出量、縦軸を汚染量にすると、国のタイプがきれいに分かれる。右下には高所得国、左上には低所得国や下位中所得国、真ん中上には回収体制が弱い中所得国が並ぶ。
カンボジアは1人あたり排出量が51.7kgとかなり高い上に、汚染量も25.2kgで突出する。パラグアイは46.1kgと排出量が大きく、汚染量は23.4kgだった。ナイジェリアは排出量26.98kgに対して汚染量16.96kg、インドネシアは30.05kgに対して12.37kgで、消費以上に処理側の弱さが効いている。
高所得国の中央値は排出量58.4kg、汚染量0.14kg。低所得国の中央値は排出量17.6kg、汚染量11.7kgだった。使う量は少なくても、漏れる量ははるかに大きい。
なぜそうなるのか
理由は単純で、プラスチック問題は消費量だけでは完結しないからだ。家庭ごみがきちんと集められるか、分別後に焼却や埋立へ安定して回せるか、野焼きや野積みを防げるかで、同じ1kgでも意味が変わる。
Our World in Data も、豊かな国では1人あたり排出量が大きい一方、アジア、サブサハラアフリカ、南米の一部では1人あたりの汚染量が高いと整理している。最貧国では正式な回収サービスに接続されていないごみが多く、中所得国では処理場の段階で漏れや焼却が起きやすい。
考察
ここで見えるのは、プラスチック問題が「豊かさの副作用」と「インフラ不足の副作用」の二層構造になっていることだ。高所得国は需要の大きさで世界の素材消費を押し上げる。中低所得国は回収と処理が追いつかず、環境中への流出で苦しみやすい。
つまり解き方も1本ではない。先進国では包装の削減、再使用設計、過剰消費の抑制が効く。中所得国では回収網、処理施設、開放型焼却の抑制、自治体財源の強化のほうが先に効く。両者を同じ政策メニューで語るとずれやすい。
消費量の多い国を責める議論と、海へ流出する国を責める議論は切り分けたほうがいい。前者は需要の問題、後者は回収と処理の問題だからだ。
未来予測
今後の焦点は2つに分かれる。1つは高所得国のプラスチック需要をどこまで減らせるか。もう1つは、中低所得国で回収と処理の基盤整備をどこまで早く進められるかだ。
OECD が示すように、いまの世界は再利用よりも埋立や不適切処理への依存がまだ大きい。もし新興国の消費が今後も伸びるのに、回収や処理への投資が追いつかなければ、海洋ごみと露天焼却の負荷はさらに膨らみやすい。
プラスチック問題の次の勝負は「誰が多く使うか」だけではない。増える需要を、漏らさず回せる都市システムをどこで先に作れるかだ。
まとめ
・1人あたり排出量ではアメリカ、フランス、イギリス、ドイツ、日本など高所得国が上位に並ぶ
・一方で汚染量の上位にはカンボジア、パラグアイ、ナイジェリア、インドネシアなどが入り、顔ぶれが大きく変わる
・高所得国は多く使うが漏れは比較的小さく、中低所得国は消費量以上に回収と処理の弱さが響きやすい
・プラスチック問題は「過剰消費」と「インフラ不足」の二層で考えたほうが実態に近い
プラスチックごみを多く出す国を調べると、結局は消費社会の地図が見えてくる。だが環境汚染まで含めて見ると、主役は消費そのものより、回収と処理の能力へ移る。海の写真だけでは見えない差は、データで見るとかなりはっきりしている。
データソース:Our World in Data / Cottom et al. (2024), OECD Global Plastics Outlook (2022)
