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美術館へ行く人は減った? 米国の20年と英国の地域差を読む

米国で年に一度以上美術館・ギャラリーへ行く成人の割合は、2002〜2022年に26.5%から17.7%へ低下したが、途中には持ち直しもあった。英国の2018/19〜2024/25年度の地域別来館回数と、米国の年齢別参加率・訪問の障壁を比べ、美術を見る習慣と訪れる機会の関係を読む。

美術館の入口に人が並んでいても、その国で美術館へ行く人が広く増えているとは限らない。何度も通う人がいる一方、一年間まったく訪れない人もいるからだ。米国の全国調査では、美術館・ギャラリーへ過去一年に一度でも行った成人の割合が、2002年の26.5%から2022年の17.7%へ下がった。ところが、その途中の2012〜2017年には上向いている。「ずっと美術離れが続いた」と言い切れる線ではない。

英国のイングランドでは別の違いが見える。国が支援する博物館・美術館の来館回数を2018/19年度と2024/25年度で比べると、ロンドンは約12%減、ロンドン外は約37%減だった。常設展示が無料の施設群でも、戻り方は一様ではない。米国の二十年間と英国の地域差をつなぐ問いは、美術館の客足を何が支え、どこで途切れているのか、ということだ。

「行く人」と「入った回数」は違う

最初に二つの物差しを分けよう。米国で使うのは全米芸術基金の芸術参加調査、SPPAである。対象は18歳以上の成人で、質問は「過去12か月に美術館またはギャラリーを訪れたか」。一回だけ訪れた人も、毎月訪れた人も、参加率の分子では一人になる。美術作品を見る施設への参加を測る数字であり、自然史博物館などあらゆる種類のミュージアムへの参加率ではない。

2022年調査の技術文書によると、調査は7月16〜25日に実施され、対象世帯から18歳以上で現役軍人ではない一人を無作為に選ぶ設計だった。訪問経験と訪問頻度は別の質問になっている。したがって2022年という表示は、1月から12月までの入場券を集計したものではなく、面接時点からさかのぼる一年の記憶を尋ねた結果だ。感染症流行の影響が残る2021年夏以降の生活を含んでいる。出典:米国国勢調査局・2022年調査技術文書。

対して英国の数字は、施設側で数えた訪問の延べ回数である。子どもも海外からの旅行者も含まれ、同じ人が複数館を巡れば、その都度数える。しかも対象はイングランドにあるDCMS支援の15の博物館・美術館の組織で、英国全土のすべての施設ではない。グループが複数の館を運営する場合もある。このため、米国の17.7%と英国の何千万回という数字を並べても、「英国人のほうが美術好き」という国民性の順位は作れない。

二十年間の線には、下落と持ち直しがある

図1は、2025年刊行のSPPA詳細報告書の表15に掲載された美術館・ギャラリーの参加率を使う。2002年26.5%、2008年22.7%、2012年20.8%、2017年23.7%、2022年17.7%。2002年から2022年の差は8.8ポイントで、出発点に対して約33.2%低い。割合が8.8%減ったのではなく、成人100人当たりで参加者が約9人少ない水準になったという意味である。出典:全米芸術基金・2025年詳細報告書。

米国で美術館へ年一度以上行く成人の割合。成人に占める割合(%)。数値は直後の表で確認できます。
図1 米国で美術館へ年一度以上行く成人の割合。対象:2002・2008・2012・2017・2022年の各調査。単位:成人に占める割合(%)。米国の18歳以上の成人。過去12か月に美術館・ギャラリーへ一度以上訪れた割合。自然史博物館などを含む全博物館の参加率ではない。2025年詳細報告書の比較表に統一。掲載した5調査年は欠測なし。調査年の間の値は推計していない。 出典:資料1、資料2
グラフの数値を表で読む
国・年美術館参加率
200226.5
200822.7
201220.8
201723.7
202217.7

線の形を三つに分けると理解しやすい。2002〜2012年は5.7ポイントの低下、2012〜2017年は2.9ポイントの上昇、2017〜2022年は6.0ポイントの低下だ。流行前の2017年にも2002年の水準には戻っていなかったが、直前の五年間は回復していた。最後の落ち込みだけを見て長期変化をすべて感染症で説明するのも、最初と最後だけを見て一方向の文化離れと呼ぶのも、途中の記録を落としてしまう。

ただし折れ線の間の各年も同じペースで動いた、と読んではいけない。ここにあるのは五つの調査時点である。たとえば2017年から2022年のどの月に参加が減ったか、閉館の時期と再開後の行動がそれぞれ何ポイントを説明するかは、この線だけでは分からない。線を結ぶのは調査値の位置を見やすくするためで、観測していない年の値を補ったわけではない。

古い資料との違いも記しておこう。2012年調査を扱う以前の報告書には、この年の参加率が21.0%と載っている。図1では各年を比較分析した2025年報告書の20.8%に統一した。古い公表値を見つけるたびに一本の線へ継ぎ足すと、集計条件の差まで行動の変化として表示してしまう。ここでは差が生じた理由を独自に断定せず、採用した版と表を明示する。

かつては、通う頻度も減っていた

参加率が下がると、施設の客数も必ず同じ割合で減るのだろうか。そうとは限らない。参加する人が少なくなっても、残る人が頻繁に通えば延べ訪問数を支えられる。反対に、初めて訪れる人が一定数いても、常連が年に数回の訪問をやめれば延べ回数は大きく落ちる。入口のカウンターだけでは、この二つを見分けられない。

以前のSPPA報告書の図1-14には、2002年、2008年、2012年の頻度が残されている。過去一年に一度でも訪れた参加者一人当たりの平均回数は、3.5回、2.9回、2.7回。推計された延べ訪問数は、それぞれ1億9,000万回、1億4,800万回、1億3,200万回だった。これは当時の報告書内で比較した値であり、2022年まで同じ頻度低下が続いたと補うことはしない。出典:全米芸術基金・2002〜2012年報告書。

それでも2002〜2012年については、訪問の広がりと繰り返しの両方が細くなったという具体像が得られる。年に一度だけの特別な外出と、数か月ごとの習慣では、施設に戻る回数も違う。1億9,000万回から1億3,200万回への減少は、単に「行く人が何人か減った」以上の動きだった。参加者一人当たりの回数と人口全体の参加率を別々に見ると、館の賑わいがどのように作られるかが分かる。

若者だけの「美術館離れ」ではなかった

同じ2025年報告書の表6で2017〜2022年を年齢別に見ると、35〜44歳の美術館・ギャラリー参加率は27.3%から21.3%、55〜64歳は21.6%から15.0%、65〜74歳は23.6%から16.5%、75歳以上は17.3%から7.1%へ下がっている。若い層だけが別の娯楽へ移った、という物語では説明しきれない。75歳以上の差は10.2ポイントに達する。

一方、18〜24歳は24.0%から18.5%、25〜34歳は25.3%から22.2%だったが、この二群の差には、報告書で90%水準の統計的有意差を確認できない印が付く。標本から得た値が低くなったことと、母集団でも低下したと判断できることは分けたい。また同じ年齢帯の比較は、五年前の同じ個人を追跡した結果ではない。感染への懸念、移動の難しさ、世代の入れ替わりなどの寄与を、この表だけで切り分けることはできない。

この違いは展示の内容を考えるときにも効いてくる。単に「若者に人気の題材へ替えれば客足が戻る」と考えると、中高年にも生じた減少を見落とすからだ。年齢表が直接教えるのは好みの原因ではなく、どの年齢層で参加の変化が観測されたかである。理由を調べるには、そもそも行こうとした人が何に妨げられたかという、別の質問が必要になる。

行きたいのに行けない人には、時間の壁がある

その手掛かりを、全米芸術基金の別の報告書『Why We Engage』に求める。ここで用いるのは2016年の総合的社会調査、GSSの芸術・文化モジュールだ。過去一年に芸術イベントへ行かなかった人のうち、具体的に行きたいイベントがあった人に、参加しなかった理由を聞いている。全成人やすべての美術館未訪問者を分母にした数字ではない。

同報告書の図10では、展示に関心があった非参加者が挙げた障壁は「時間がない」61%、「行くのが難しい」31%、「費用が高すぎる」31%、「一緒に行く人が見つからない」16%だった。複数の理由を答えられるので足して100%にはならない。ここでいう展示も、美術館・ギャラリー訪問だけと完全に同じ範囲ではない。それでも入場料だけで外出が決まるわけではないことは、回答の並びから読み取れる。出典:全米芸術基金・参加動機と障壁の報告書。

時間がないという回答の中身を、この調査は仕事、家事、育児などへ分解してはいない。だから「育児が主因だった」と数字にない理由を付け加えることはできない。ただ、行きたい展示があることと、その展示が開いている時間に移動して見終えられることの間には、別の条件がある。展示内容への関心があっても訪問が実現しない、という区別を調査は設けている。

これは2022年の減少を直接説明する原因分析でもない。感染症流行前の2016年に、関心と訪問の間にすでに隔たりがあったという記録だ。「行かなかった=美術に関心がない」と置き換えるより、行きたい展示があっても到達できなかった人を別に数えるほうが、参加の仕組みを正確に表せる。美術館への距離は地図上の距離だけではない、という生活上の実感に、調査の分類が対応している。

美術館へ行かないことと、芸術に触れないこと

参加の意味をもう一段広げると、美術館だけから文化全体の衰退を語れない理由も見える。全米芸術基金の2023年の概要報告書では、2022年の調査期間に何らかの作品を作ったり実演したりした成人が約52%、対面の芸術イベントに参加した成人が約48%、電子・デジタル媒体を通じて芸術を鑑賞した成人が約75%だった。この三つは重なり合う集団である。創作する人の中には美術館へ行く人もいるので、合計して文化参加者の人数を求めることはできない。

美術館・ギャラリーへの参加率17.7%は、対面参加の一部を捉えた指標になる。楽器を演奏する、写真を撮る、家で作品を作るといった関わりは、この訪問率に含まれない。家にいる時間が長くなった人が、必ずしも作品との関係をすべて失ったわけではないという区別ができる。ただし概要報告書は、創作活動の質問項目が年によって変化したため、創作全体の割合の長期比較には難しさがあるとも説明している。美術館の低下分を、創作の増加分で埋め合わせたと計算することもできない。

同様に、電子・デジタル媒体の約75%という値を、オンライン美術館の利用率と呼ぶのも誤りだ。ここには音楽や舞台など多様な鑑賞が入っている。配信を見る人が多いことから、来館が減った分はすべて配信へ移ったと推論するには、同じ人の行動を追う別の分析が要る。来館率とデジタル鑑賞率を別々に測るのは、画面で触れることと実物の前へ移動することの両方を、文化との関わりとして見失わないためである。出典:全米芸術基金・2022年調査概要報告書。

英国では、同じ無料施設群にも地域差がある

ここで英国へ移ろう。DCMSの2024/25年度の公表資料は、支援する15組織が常設コレクションを無料で公開する施設群だと説明している。対象年度は2024年4月から2025年3月。感染症流行の影響をまったく受けなかった最後の比較年度が2018/19年度である。図2ではこの年度の訪問回数を、それぞれの地域で100とする。

両年度に開いていた館を比べるDCMSの集計では、ロンドンの訪問は4,140万回から3,660万回、ロンドン外は830万回から520万回になった。公表された百万回単位の丸め値から計算すると、2018/19年度を100とした2024/25年度の値は、ロンドン88.4、ロンドン外62.7だ。同じ出発点にそろえることで、もともとの客数の多さとは別に、どれだけ戻ったかを比較できる。出典:DCMS・2024/25年度実績。

英国の対象館への訪問は地域で戻り方が違う。2018/19年度の訪問回数=100。数値は直後の表で確認できます。
図2 英国の対象館への訪問は地域で戻り方が違う。対象:2024/25年度を2018/19年度と比較。単位:2018/19年度の訪問回数=100。イングランドのDCMS支援博物館・美術館群の延べ訪問回数。成人以外や海外客も含む。DCMSの両年度比較対象を使用しMuseum of the Homeを除外。ただしグループ内の一部施設の閉館は残る。欠測補完なし。公表された百万回単位の丸め値から計算した概数。 出典:資料5
グラフの数値を表で読む
国・年流行前を100
ロンドン88.4
ロンドン外62.7

元の規模にも意味がある。ロンドンの減少は480万回、ロンドン外の減少は310万回。減少率は地方のほうが大きくても、失われた回数は首都のほうが多い。率だけでは負担の規模を、総数だけでは地域ごとの落ち込みの深さを読み落とす。文化施設が集中する都市では、比較的小さい割合の変化が、非常に多くの訪問回数に相当するのである。

この比較には、閉館の調整にも限界がある。DCMSは比較期間に閉じていたMuseum of the Homeを比較から除く一方、館のグループ内の一部施設の閉館は、グループ全体の数字に残していると注記する。たとえばTate LiverpoolやNational Media Museumの閉館が含まれる。図2の地方の落ち込みを、住民の関心の低下だけと読むことはできない。訪れたくても使える展示空間が減っていれば、施設側の条件も回数を押し下げる。

海外客と、余暇をめぐる競争

英国会計検査院、NAOの2026年報告書は、客数が戻りきらない大きな背景として海外客の回復の遅れを挙げる。2024/25年度の海外客による訪問は1,940万回で、流行前の年間平均2,260万回を下回った。2018/19年度より全体の訪問が少ない9組織のうち7組織では、海外客の訪問が15〜73%減っていたという。全体の参加は、地元住民の習慣だけでは決まらない。出典:NAO・博物館美術館の財務耐性報告書。

ここでの2,260万回は流行前の年間平均なので、特定の2018/19年度の値と置き換えてはいけない。同じ報告書が全体の回復を「流行前平均より13%少ない」と述べるのに対し、DCMSが2018/19年度との比較で約16%減と述べるのは、比較の基準や対象の取り方が違うからだ。大きいほうの減少率だけを選ぶと、数字は強く見えても何と比べたかが消えてしまう。

NAOはさらに、来館者が余暇や自由に使える支出の使い道をより選ぶようになり、没入型体験、劇場、史跡などとの競争があると記す。旅行者についても、初めて来る人が少なくなると、同じ観光地をすでに知る再訪者を呼び込む必要がある。これは監査報告書が整理した背景であり、図2の地域差のうち何割を競争が説明するかまで推計したものではない。

入口が無料でも、運営の費用は消えない

無料の常設展示があることは、来館者の支払いの一部を取り除く。しかし移動や時間まで無料にはならず、施設の側にも光熱費や人件費、建物を維持する費用がある。NAOの公表資料では、対象施設群の費用は2021/22〜2024/25年度に物価調整後でも18%増えた。来館回数がまだ戻る途中でも、開館を続けるための費用は増えていたのである。出典:NAO・報告書公表資料。

同資料は、寄付、会員制度、会場貸し、有料体験、飲食や物販など、自主収入を増やす動きも挙げている。人気の特別展の収入は変動しやすい。経費を抑える対応も、コレクションの保存や無料での公開という仕事に影響しうる。入口の人数だけで施設が安定しているかを判断できないのは、常設展示と特別展、旅行者と地元客、来館回数と支出の関係が一対一ではないためだ。

これは「無料だから効果がない」という結論ではない。無料でなければ訪問がさらに少なかった可能性もあり、今回の資料には同条件で有料化した施設群との比較がない。確認できるのは、無料の常設展示を持つ施設群にも、閉館や旅行者の構成、運営費用といった別の条件があり、それらを含む実際の訪問回数には地域差が残ったということだ。

美術館の賑わいを、三つの数字で読む

米国の参加率、過去の訪問頻度、英国の施設別集計を並べると、「美術館へ人が戻った」という言葉を三つに分けられる。一年に一度でも行く人が増えたのか、一人が行く回数が増えたのか、旅行者を含めた延べ回数が増えたのか。同じ混雑した展示室の写真でも、この三つのどれが動いたかは分からない。統計にはそれぞれを確かめる異なる質問がある。

米国では、2002年から2017年までの線だけでも、参加率の長期低下と一時的な持ち直しが同時に存在する。2022年の値は、その上に感染症流行期の外出条件が重なった時点の記録である。英国では、2024/25年度になっても、ロンドン外の対象館の訪問は2018/19年度の約6割だった。ただしその差には閉館も含まれ、住民一人当たりの美術への関心を測ってはいない。

自分の暮らしに引き寄せるなら、展示に興味を持った瞬間と実際に入口を通った日を別々に思い出すとよい。その間に必要だった移動、同行者、使える時間は、2016年の調査でも別の障壁として数えられていた。二十年間の参加率と地域別の来館回数が示すのは、美術を見る習慣が作品の魅力だけで成立するのではなく、訪れる機会の積み重ねで作られるという姿である。今回の資料は2026年11月6日に確認した。米国の2022年値を現在の参加率として延長せず、英国も確認した年度の範囲で読む。

一次資料:全米芸術基金:Arts Participation in 2022: A Technical Summary Report(2025年8月、表6・15、方法)、米国国勢調査局:July 2022 Public Participation in the Arts Supplement Technical Documentation(質問文・対象)、全米芸術基金:A Decade of Arts Engagement, 2002–2012(図1-13・1-14)、全米芸術基金:Why We Engage: Attending, Creating, and Performing Art(2016年GSS、図10)、英国DCMS:DCMS-sponsored museums and galleries annual performance indicators 2024/25: headline release(2026年4月29日更新)、英国会計検査院:The financial resilience of DCMS-sponsored museums and galleries(2026年、1.11〜1.13)、英国会計検査院:Museums and galleries boost self-generated income but face risks to their finances(費用・自主収入)、全米芸術基金:Arts Participation Patterns in 2022: Highlights from the Survey of Public Participation in the Arts(2023年10月、方法・図1・比較の限界)

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