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レコードはCDを追い越した? 日本の31倍の復活と米国の逆転を読む

日本のレコード生産は2009年の底から約31倍に回復したが、2024年の枚数はCDの約三十分の一。一方、米国ではレコードがCDを上回る。25年間の供給記録と媒体別の数量・金額を辿り、復活の勢いと市場の主役が違う理由を読む。

レコードが復活している、と聞くと、音楽売り場が昔の姿へ戻りつつあるように思える。ところが同じ2024年の統計を開くと、日本と米国では復活の意味がかなり違う。日本のアナログディスクは314万9千枚、CDは1億450万5千枚。米国ではレコードが4,340万枚、CDが3,330万枚だった。日本ではCDが圧倒的に多く、米国ではレコードが上回る。伸びる媒体と、最大の媒体は必ずしも同じではない。

さらに日本の長期記録には、もっと意外な数字がある。2009年のアナログディスク生産は10万2千枚。それが2024年には約31倍に増えた。それだけの回復があっても、CDとの二つの媒体を合わせた生産枚数に占めるアナログの割合は約2.9%にとどまる。小さくなった底から勢いよく戻ることと、音楽の物理媒体の主役になることは、別の出来事なのだ。

この記事では日本レコード協会の「日本のレコード産業2025」と、米国レコード協会の2025年年次報告に載る2024年比較欄を軸にする。日本の数字は会員社の生産実績、米国の数字は返品控除後の卸売ベースで、全国の店頭購入を同じ方法で数えた調査ではない。この違いを残したまま、各集計の中で何が大きく、何が伸びたのかを読む。確認日は2026年10月14日であり、図の対象年とは区別している。

消えかけた谷から、約31倍の回復

図1は、日本のアナログディスク生産数量を2000年から2024年まで並べたものだ。単位は万枚。もとの表の千枚単位を10で割った。2000年は191万4千枚あり、2005年には30万6千枚、2009年には10万2千枚へ減った。年次記録をこの期間内で比べると2009年が最小で、2000年の約5.3%しか残っていなかった。現在の復活を理解するには、まずこの深い谷を見る必要がある。

日本のレコード生産、谷からの回復。万枚(アナログディスク生産数量)。数値は直後の表で確認できます。
図1 日本のレコード生産、谷からの回復。対象:2000〜2024年(暦年)。単位:万枚(アナログディスク生産数量)。日本レコード協会会員社の生産実績。会員社が受託した非会員社からの販売受託分を含む。中古売買・聴取回数の統計ではない。2000〜2024年の全25年に欠測なし。千枚を万枚へ換算。 出典:資料1
グラフの数値を表で読む
国・年アナログ生産
2000191.4
2001129.7
200269.7
200358
200489.4
200530.6
200624.8
200732.4
200821.2
200910.2
201010.5
201121
201245.3
201326.8
201440.1
201566.2
201679.9
2017106.3
2018111.6
2019121.9
2020109.5
2021190.7
2022213.3
2023269.1
2024314.9

図1の線は、谷のあと一直線に伸びてはいない。2012年の45万3千枚から2013年には26万8千枚へ減り、2019年の121万9千枚から2020年には109万5千枚へ下がる。翌2021年は190万7千枚、2022年は213万3千枚、2023年は269万1千枚、2024年は314万9千枚となった。直近の増加だけを切り出すより、途中の落ち込みを含めたほうが、毎年必ず伸びる市場ではなかったことが分かる。

2009年から2024年の増加分は304万7千枚だ。倍率なら約30.9倍、枚数なら約305万枚の上積みになる。どちらも同じ変化を表すが、受ける印象は違う。倍率は小さかった出発点を強調し、増加枚数は売り場に加わった商品の規模を示す。CDの億枚単位の数字と並べるときには、後者も必要になる。復活という言葉を具体化するには、勢いと到達点を一緒に読むのがよい。

出発年を変えると物語も変わる。2024年の数量は2000年に対して約1.65倍であり、約31倍ではない。2000年代に大きく縮んだあと、その年の水準を超えた、という見方になる。1999年の記録は298万5千枚なので、2024年の314万9千枚はそれを16万4千枚上回る。谷からの復活と、世紀の変わり目の水準への回帰が、同じ時系列の中に重なっている。

ここで数えているのは新品を生産した枚数であって、中古レコード店で売買された盤の数ではない。昔買ったレコードを家で聴き直す行動も生産数量を増やさない。反対に、新しい盤を買っても、一度も再生しなければ聴取時間は増えない。図の上昇から直接分かるのは、集計対象の商品供給が増えたことだ。音楽を聴く時間まで昔へ戻ったと解釈するには、別の記録が必要になる。

金額は約42倍、枚数は約31倍

同じ日本の表で生産金額を辿ると、2009年のアナログディスクは1億9千万円、2024年は78億8,700万円だった。金額は約41.5倍、数量は約30.9倍だから、金額のほうが大きく伸びている。枚数が増えただけでなく、生産金額を数量で割った平均額も上がったことになる。金額の復活をそのまま購入枚数の復活に読み替えると、この差を見落としてしまう。

計算すると2009年は1枚当たり約1,863円、2024年は約2,505円になる。どちらも生産金額を生産数量で割った値で、店頭で支払う平均価格ではない。商品の種類や構成の変化も反映するため、同じ盤の値上がり率とも違う。それでも、1枚当たりの集計額が約34%上がったことは確認できる。数量の倍率にこの平均額の倍率を掛けると、金額の倍率になる。

直近の一年でも同じ現象がある。2023年から2024年に数量は269万1千枚から314万9千枚へ約17.0%増えた。一方、生産金額は62億6,700万円から78億8,700万円へ約25.8%増えた。1枚当たりでは約2,329円から約2,505円へ約7.5%の上昇だ。約17%の数量増と約7.5%の平均額上昇は足し算でなく掛け算で結びつき、約26%の金額増となる。

この数字だけでは、原材料費の上昇、豪華な商品の増加、価格の高い作品への構成変化のどれが何割を説明するかは分からない。そこを特定した原因として語ることはしない。ただし「売上の伸びが枚数の伸びより大きい」という構造は明確だ。読者がレコードの成長の記事を読むときも、金額なのか数量なのかを区別すれば、同じ復活という見出しの中身をかなり具体的に判断できる。

日本の5.3%と米国の73.8%は、何の割合か

図2では2024年のCDとアナログの二つの区分だけを取り出し、その金額合計のうちアナログが占める割合を計算した。日本は7,887百万円を、アナログ7,887百万円とCD140,239百万円の合計で割り、約5.3%。米国は954.4百万ドルを、レコード954.4百万ドルとCD338.9百万ドルの合計で割り、約73.8%となる。通貨換算はせず、それぞれの国内集計の構成を示した。

CDとレコードの金額中、レコードは何割?。%(CD+レコードの金額を分母)。数値は直後の表で確認できます。
図2 CDとレコードの金額中、レコードは何割?。対象:2024年(米国は2025年版の比較欄)。単位:%(CD+レコードの金額を分母)。日本は会員社の生産金額、米国は返品控除後の卸売金額。統計内の構成の比較で、同じ方法による全国店頭購入の比較ではない。日本はCDシングルも含むCD計、米国は報告表のCD区分。配信・音楽ビデオ・その他媒体を分母から除く。両国欠測なし。 出典:資料1、資料2
グラフの数値を表で読む
国・年レコード金額比率
日本(生産)5.32
米国(卸売)73.8

この分母に、ストリーミング、ダウンロード、音楽ビデオ、カセットなどは含めていない。したがって米国の73.8%は、録音音楽市場全体の約四分の三がレコードだという意味ではない。CDとレコードという二つの物理媒体に絞ったときの割合である。日本についても、音楽産業全体のうち5.3%がレコードという意味ではない。図のタイトルと分母が、数字の読み方を決める。

日本ではアナログの金額に対してCDが約17.8倍ある。米国では逆にレコードがCDの約2.82倍ある。それぞれの統計の中での大小関係は大きく違う。しかし図の二本の棒の差を、国民の好みの差が正確に68.5ポイントある、とは扱えない。生産と正味出荷に近い卸売集計という違いがあり、会員社の対象範囲や媒体区分まで完全にそろえた比較ではないためだ。

枚数で計算し直すと、日本のアナログ比率は約2.9%、米国は約56.6%になる。金額で見たときより、どちらもアナログの割合が小さい。2024年の米国では、レコード1枚当たりの卸売額は約22.0ドル、CDは約10.2ドルで、およそ2.16倍の違いがある。枚数でCDをやや上回る市場が、金額ではCDを大きく上回って見える理由の一つは、この平均額の差だ。

ただし、枚数は曲数でも人の数でもない。一枚のシングルと一枚のアルバムを同じ一枚として数える集計では、収録曲数はそろわない。一人が複数の盤を買うこともあり得るので、枚数を人口で割ってもそのまま購入者比率にはならない。同じ音源を繰り返し聴く行動も数えない。レコードがCDを抜いたという文を理解するときは、枚数で抜いたのか金額で抜いたのか、何を一枚に数えたのかが大切になる。

日本のCDを開くと、シングルの大きさが見える

日本の2024年のCD1億450万5千枚は、一つの均質な市場ではない。内訳はシングル4,198万2千枚とアルバム6,252万3千枚である。シングルだけでCD数量の約40.2%を占める。米国の物理媒体統計を日本へそのまま当てはめるときに、このまとまりを見落としやすい。日本の生産統計には、アルバム売り場だけでは見えない大きなCDの供給が含まれている。

その動きも一様ではない。日本のCDアルバムは2023年の7,130万5千枚から2024年の6,252万3千枚へ減った。一方、シングルは8センチと12センチを足すと、2023年の3,748万1千枚から2024年の4,198万2千枚へ増えた。アルバムの減少は878万2千枚、シングルの増加は450万1千枚。足し合わせるとCD全体では428万1千枚の減少になるが、内側には反対向きの変化がある。

金額でもシングルは422億4,800万円、アルバムは979億9,100万円だった。CDの数量では約四割のシングルが、金額では約30.1%になる。平均額を計算するとシングルは1枚当たり約1,006円、アルバムは約1,567円で、数量と金額の構成差が説明できる。安い区分の枚数が増え、高い区分の枚数が減るだけでも、CD全体の数量と金額は同じ率では動かない。

仮に日本の分母からCDシングルを外し、アナログとCDアルバムの金額だけで計算しても、アナログの割合は約7.4%だ。図2の約5.3%よりは高くなるが、CDアルバムのほうが約12.4倍大きいという関係は残る。日本のCDの大きさはシングルが含まれることだけで説明できない。アルバムにも相当な規模が残っている。この再計算は、媒体区分の違いを一つ取り除いたとき、結論がどの程度変わるかを確かめるものだ。

米国の2024年版の報告ではCDシングルなどが「その他の物理媒体」に含まれると明記されている。今回の図は2025年版の比較欄のCD区分を使うが、日本のCD総数と米国のCD区分が完全に同じ商品集合だとは仮定しない。だからこそ日本側でアルバムのみの計算も示した。比較の限界は単なる但し書きではなく、どの数字が国ごとの物理媒体の姿を作っているかを知る手がかりになる。

伸びた盤は、どんな音楽の盤だったのか

日本のアナログ314万9千枚を協会の邦盤・洋盤区分で分けると、邦盤が203万6千枚、洋盤が111万4千枚になる。四捨五入の関係で二つの内訳の合計は公表総数と千枚ずれるが、総数を分母にした邦盤の割合は約64.7%だ。アナログの復活は、洋楽だけの現象として描けるものではない。日本の集計対象においては、邦盤のほうが多く生産されている。

金額でも邦盤は51億8,300万円、洋盤は27億300万円と記録されている。こちらも丸めによって合計と総額が100万円ずれる。邦盤の金額比率は約65.7%で、数量比率に近い。協会が示す前年比では、邦盤の数量は111%、洋盤は131%だった。到達した規模が大きいのは邦盤、直近の増加率が高いのは洋盤という、二つの顔がある。成長率だけの順位と供給枚数の順位は一致しない。

CDの邦盤は9,541万4千枚、洋盤は909万1千枚で、邦盤がCD数量の約91.3%を占める。アナログは邦盤が多いものの、CDほど邦盤に偏ってはいない。ここから読み取れるのは、日本の物理媒体の中でも、媒体を変えると音楽の構成が変わるということだ。なお邦盤・洋盤は協会の商品区分であり、購入者の国籍や歌詞の言語を直接数えた統計ではない。国籍別のファン人口に置き換えることはできない。

レコードがCDに勝っても、配信には勝っていない

米国の2024年比較欄では、レコードとCDなどを含む物理媒体全体の卸売収入が13億1,550万ドル、ストリーミングが91億8,520万ドルだった。ストリーミングは物理媒体全体の約7倍である。レコードの9億5,440万ドルは、総収入111億8,810万ドルの約8.5%にあたる。物理媒体の中で主役となることと、録音音楽収入全体で主役となることは、はっきり違う。

同じ報告の2025年欄でも、レコードは4,680万枚、卸売収入10億4,290万ドルへ増えた一方、CDは2,950万枚、3億1,240万ドルとなる。レコードの優位は続くが、ストリーミングは94億7,450万ドルで、レコード収入の約9.1倍ある。最新年の数字を見ても、配信の時代が物理媒体の時代へ反転したとは言えない。配信が大きい市場の中で、物理媒体の構成が変わっているのである。

日本の2024年には、ストリーミングの会員会社収入が1,132億2,900万円、アナログの生産金額が78億8,700万円だった。前者は後者の約14.4倍である。生産金額と会社収入を合わせる協会の既存集計なので、同一段階の消費支出比率とは言えないが、規模の違いは読み取れる。CDの生産金額は1,402億3,900万円あり、日本ではCDが残る大きさと、配信の大きさを同時に考える必要がある。

日本のストリーミングは前年より107%、アナログ生産金額は126%だった。増加率ではアナログが高くても、到達額では配信がはるかに大きい。米国でも2025年のレコード収入の伸びは9.3%、ストリーミングは3.1%と報告されるが、絶対額の関係は逆にならない。文化商品の動向では、目立つ伸び率を持つ媒体が、日常の中心を占める媒体とは限らないことが、二つの国で確認できる。

家の棚と、その年の市場は違う時間を生きる

生産記録は毎年新しく加わる商品の流れだが、家の棚には何年分もの音楽が蓄積している。日本レコード協会の2024年度ユーザー調査も、直近半年に購入した音楽と、それより前に買った音楽を聴く行動を分けている。以前買ったCDを聴く場合は、その半年に音楽へお金を使わない聴取として扱う。買った当時には有料だったものが、観察する期間によって別の区分に入るのだ。

この定義を見ると、CDの新規生産が減ったからCDを聴く人が同じ割合で減った、と言えない理由が分かる。手元の盤は、その年に新しい購入がなくても再生できる。レコードについても同じで、毎年の供給の線と家庭にある盤の総量は別の記録になる。図1は新しい流れの回復を示すが、家に眠っていた盤が再び聴かれた規模までは表していない。

ユーザー調査は2024年12月6日から12日に行われたインターネット調査で、対象は12〜69歳の男女、本調査は4,500人。性年代の人口分布に合わせて集計を調整し、12〜15歳は母親の代理回答である。そのため70歳以上を含めた全国民の行動を直接示すものではない。生産統計とは観察対象が違い、盤の枚数と回答者の行動を混ぜないことが、生活と統計を結びつける入口になる。

日常の場面に引き寄せれば、普段は配信で聴き、気に入った作品だけ盤で持つという行動は、二つの媒体の支出を両方生む。ただし今回の集計だけで、その行動をする人が何割いるかは確定できない。確認できるのは、配信の収入とアナログの供給が同じ年に増えたことである。二つの増加は両立するので、どちらかの普及が必ずもう片方の消滅を意味するという読み方は、観測された数字に合わない。

新旧の年次報告をつなぐときにも、段差がある

米国の2024年版の報告には、レコード収入が約14億ドルと出てくる。2025年版の2024年比較欄では約9.5億ドルだ。これはそのままレコード市場の急減を意味しない。前者は推定小売金額を中心とした表で、後者は卸売金額の表である。2025年版は世界の報告基準に合わせて卸売ベースへ移ったことを明示している。同じ年でも評価する取引段階を変えると金額が変わる。

数量にも改訂がある。2024年版の表ではレコード4,360万枚、CD3,290万枚だが、2025年版の比較欄では4,340万枚と3,330万枚になっている。この記事では図2と枚数の比較を2025年版の2024年欄で統一し、過去版の数量を混ぜなかった。公表値は永遠に固定された記録ではなく、報告時点によって更新される場合がある。違う年版から都合のよい数字を選ぶと、存在しない変化を作ってしまう。

日本にも集計範囲の段差がある。協会は2026年2月25日の発表で、会員社実績に非会員社分の推計を加えた国内市場全体の「音楽ソフト・音楽配信売上推計」を公表すると説明した。対象は2025年からだ。それまでの会員社の生産実績を、新しい全国市場の売上推計へそのままつないではいけない。今回は長期線と国内構成を同じ統計誌の2024年まででそろえ、対象の変化を避けている。

レコードの復活で具体的に起きたことは、消えかけた日本の供給が大きく戻り、米国では物理媒体の中でCDを上回る構成が定着していることだ。日本の数量は谷から約31倍になってもCDの約三十分の一で、金額の伸びには1枚当たりの平均額の上昇も重なる。この違いを知ると、店のレコード棚が広がった光景を、昔と同じ音楽生活の再来と即断せず、その国に残る他の媒体との関係で読み解ける。

図と再計算の出典は日本レコード協会および米国レコード協会。公表表から人類ログが単位換算、構成比、倍率、平均額を計算した。日本の長期線は2000〜2024年の全25年を使い、この範囲に欠測はない。四捨五入された元数値からの再計算なので、比率は概数として示した。二つの図は、新品供給の時間的な回復と、同年の媒体構成という異なる比較を表している。

一次資料:日本レコード協会「日本のレコード産業2025」(2024年実績・長期年表)、RIAA Year-End Recorded Music Revenue Report 2025(2024・2025年卸売比較)、RIAA 2024 Year-End Revenue Report(推定小売・媒体定義)、日本レコード協会「2024年度音楽メディアユーザー実態調査」、日本レコード協会「国内レコード市場全体を示す新たな音楽ソフト・音楽配信売上推計を公表開始」(2026年2月25日)、日本レコード協会「統計・認定データ」(データ利用と加工の表記条件)

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