街で煙を見かけなくなった。職場の喫煙室へ向かう人も少なくなった。そこから「たばこを使う人そのものが減った」と考えるのは自然だ。しかし、米国とスウェーデンの公的調査を並べると、煙が減ること、毎日吸う人が減ること、たばこやニコチン製品の利用が減ることは、それぞれ別の変化だとわかる。
米国では、紙巻きたばこだけを使う成人の割合が2017年の10.8%から2023年の7.9%へ低下した。同じ期間に電子たばこだけを使う割合は1.2%から4.1%へ上昇している。スウェーデンでは2024年、毎日喫煙する16〜84歳の人は5.4%だったが、男性の22%、女性の10%は毎日スヌースを使っていた。スヌースとは、口腔内で使う製品を指す。ここでの集計には、たばこ葉を含むものと、葉を含まないニコチンパウチの両方が入る。
数字が食い違っているわけではない。数えている行動と製品が違うのだ。今回の問いは、喫煙率が下がった国で、何が減り、何が残り、何が増えているのか。国の優劣を一列に並べるより、同じ国の中の内訳と世代差を調べると、日常の風景が変わった理由が具体的に見えてくる。
半世紀の減少と、近年の入れ替わり
まず米国の長い記録を見よう。CDCの報告では、成人の紙巻きたばこ喫煙率は1965年の42.4%から2022年の11.6%へ下がった。およそ半世紀前には成人の四割を超えていたものが、一割強になった。差は30.8ポイントで、最初の割合に対する相対的な減少は約73%になる。これは喫煙習慣の規模が大きく変わったことを示す。ただし、電子たばこや口腔内製品まで含めた利用率の推移ではない。
2022年の11.6%の定義も確認したい。対象は18歳以上で、生涯に紙巻きたばこを100本以上吸い、調査時点で毎日または時々吸っている人だ。「現在、毎日吸う人」だけを数えるより範囲が広い。一方、昔は吸っていたが現在は吸わない人は入らない。この条件は、短い記事の見出しでは省略されやすいが、他国の数値と比べる際の重要な部分になる。CDCの定義と2022年の集計で確認できる。
その長期的な低下を背景に、近年の製品別の変化を調べたのが、2025年公表のCDC報告だ。資料の対象期間は2017〜2023年で、全国健康面接調査を使っている。ここでは紙巻き、葉巻、パイプ、無煙たばこに加えて電子たばこも製品使用の集計に含める。米国の報告でいう「たばこ製品」の箱は、葉を燃やして吸うものだけの箱より大きい。
記事を読むときに混同しやすいのが「紙巻き喫煙」と「紙巻きだけの使用」である。前者は電子たばこも使う人を含みうる。後者は調査で扱う他の製品を現在使っていない人に限定する。したがって、2022年の11.6%と2023年の7.9%を引き算して、一年で3.7ポイント減ったとは言えない。年だけでなく、含まれる人の条件まで違うからだ。
全体の線は横ばいでも、中身は変わる
図1は同じCDC報告の表から、2017年と2023年の二つの時点を取り出した。18歳以上の成人に占める割合で、紙巻きだけ、電子たばこだけ、いずれかの製品を使う人の三つを比較する。途中の年の数値を補った図ではなく、線は二時点の差を結ぶためのものだ。下がる線と上がる線がある一方、すべての製品を含めた割合はほぼ横に動いている。

グラフの数値を表で読む
| 国・年 | 全製品使用 | 紙巻きのみ | 電子のみ |
|---|---|---|---|
| 2017 | 19.3 | 10.8 | 1.2 |
| 2023 | 19.5 | 7.9 | 4.1 |
紙巻きだけを使う割合は10.8%から7.9%となり、2.9ポイント低下した。電子たばこだけの割合は1.2%から4.1%となり、2.9ポイント上昇した。割合の差が同じでも、もとの規模は大きく違う。前者は最初の約七割の水準に縮小し、後者は約3.4倍になった。何ポイント動いたかと何倍になったかは、変化の異なる面を表している。
全製品の使用率は19.3%から19.5%だった。点推計の差は0.2ポイントあるが、CDCの期間全体の傾向分析では、有意な変化とはされていない。そのため本記事では横ばいと表現する。19.5%が19.3%より大きいという一点だけで「増加に転じた」とするのは、調査のばらつきを無視した読み方になる。これは毎年の山や谷まで平らだったという意味でもない。
この三つの割合には足し算上の関係にも注意が要る。全製品の使用率は、紙巻きだけと電子たばこだけの合計ではない。葉巻だけ、パイプだけ、無煙たばこだけを使う人、複数製品を併用する人も含む。図の最も高い線の下には、ほかの製品や組み合わせが残っている。二つの線の変化だけで箱の中身をすべて説明したつもりになると、また別の人々を見落とす。
また、割合は成人全体を分母としている。「全製品使用者のうち電子たばこだけの人が4.1%」という意味ではない。成人の4.1%が電子たばこだけを使うのである。全体の使用率と製品別の割合を比べるときには、分母を揃えて読む必要がある。図はこの分母を統一しているため、全体が動かなくても製品構成が変わることを捉えられる。元の値はCDC報告の全成人の表に掲載されている。
この構成の変化は、若い成人でとくに大きかった。同じCDCの表で18〜24歳をみると、紙巻きだけの使用率は2017年の6.5%から2023年の1.2%へ低下し、電子たばこだけの使用率は2.7%から10.3%へ上昇した。最初は紙巻きだけのほうが高かったが、最後は電子たばこだけのほうが高い。全成人の平均に隠れていた、若い層の製品構成の逆転が見える。
この年齢層では、全製品の使用率は18.3%から16.8%だった。単独の紙巻き使用が5.3ポイント下がっても、全製品が同じ幅で下がるわけではない。電子たばこだけの使用の上昇幅は7.6ポイントあり、ほかの製品や併用の構成も変わるためだ。紙巻きの減少だけをその世代の利用減少と同一視すると、何を使うかの変化を大きく取りこぼす。CDCは期間全体の全製品使用の傾向に有意な変化を認めておらず、この二時点の差から全製品が着実に減り続けたとも判断しない。
煙が減っても、使う場所は別の場所へ
街角で目に入るのは、主に煙を出す行動である。口腔内で使う製品は、同じようには見えない。煙の減少という生活上の実感と、製品使用者の割合が横ばいという統計が両立するのは、観察できる行動の範囲と調査の範囲が異なるためだ。目に見える変化は確かでも、それだけで利用者全体の人数を推し量ることはできない。
電子たばこは紙巻きたばこと同一の製品ではない。加熱式たばことも区別する必要がある。スウェーデンの2024年調査票は、喫煙の質問に紙巻き、葉巻、パイプ、加熱式たばこなどを含め、電子たばこを除くと明記している。続く質問で電子たばこを尋ね、さらにたばこを含むスヌースと、たばこを含まないニコチンパウチを別々に尋ねる。日常語では近い言葉で呼ばれても、調査では別の欄に置かれる。
この質問の順番には、変化を記録するための工夫がある。喫煙の質問だけなら、煙を吸わない利用者は「いいえ」で終わる。別の製品についても尋ねれば、その人がどのような製品を使うかを記録できる。販売される品目が変わると、同じ質問だけを長く続けることにも限界が出てくる。統計の連続性を保つことと、新しい行動を取りこぼさないことを両立させる必要がある。
質問票には「毎日」と「時々」の選択肢がある。本人が日常的な喫煙者だとは感じていなくても、時々吸うならその回答欄に入る。人が自分に付ける呼び名と、調査で採用される条件は同じとは限らない。この点は、友人の印象から国全体の習慣を推測する際にも関係する。いつ、どの製品を、どの程度使うかを分けたほうが、生活の実像に近づく。2024年の公式調査票、質問26〜29はその区別を示している。
スウェーデンの「五%」を開いてみる
次にスウェーデンへ移ろう。公衆衛生庁の英語版集計では2024年、16〜84歳の毎日の喫煙は5.4%だった。同庁のスウェーデン語の概況は整数に丸めて5%と記す。この違いは直ちに矛盾ではない。小数第一位の値を示すか、整数の概況を示すかで見え方が変わる。本記事の全国値には小数第一位まで示された5.4%を採用する。
しかし、これを「吸う人は五%だけ」と読み替えると範囲が狭すぎる。2024年には時々喫煙する人も6%いた。毎日と時々は同じ喫煙質問の別々の回答なので、喫煙については互いに区別される。概況値を足すと、現在吸う人の規模はおよそ一割強になる。ただし公表値には丸めがあるため、ここでは小数点まで精密な合計を作らない。
さらに毎日スヌースを使う人は、男性22%、女性10%だった。この比率は男女それぞれの16〜84歳人口が分母であり、男女をまとめた全国値の5.4%とはそのまま同じ形の比較にならない。二つを単純に足して全国の使用率とすることもできない。喫煙とスヌースを併用する人がいる可能性があり、性別ごとの人口構成も必要だからだ。
それでも、五%という印象から消えてしまう行動が相当あることはわかる。スヌースの集計は、たばこ葉を含む製品だけではない。同庁は2022年に質問を分け、たばこを含まないニコチンパウチも区別して尋ねるようにした。葉を使わない製品の増加が起きたとき、たばこ葉だけを対象にした指標では、その動きが外側に出る。何をもって「使わなくなった」と判断するかは、箱の作り方で変わる。
この国の詳しい内訳は、公衆衛生庁の製品別集計とスヌースの集計で確認できる。全国の毎日の喫煙が少ないという事実と、口腔内製品の利用が残るという事実を、両方そのまま受け止めることが出発点になる。片方だけを選ぶと、同じ国を「ほとんど使わない国」にも「多く使う国」にも見せられてしまう。
若者と高齢者の順位は、頻度で逆転する
図2ではスウェーデンの2024年の世代差を示す。国全体の平均から離れ、16〜29歳と65〜84歳について、毎日の喫煙と時々の喫煙を比較した。同じ国、同じ年、同じ調査で条件を揃えた比較である。棒を四つに分けたのは、年齢だけでなく、頻度が結論をどう変えるかを見せるためだ。

グラフの数値を表で読む
| 国・年 | 喫煙者の割合 |
|---|---|
| 16〜29歳・毎日 | 2 |
| 65〜84歳・毎日 | 7 |
| 16〜29歳・時々 | 10 |
| 65〜84歳・時々 | 3 |
毎日喫煙する割合は16〜29歳が2%、65〜84歳が7%で、高齢の層が高い。ところが時々喫煙する割合は、若い層が10%、高齢の層が3%となり、順序が逆になる。高齢層は毎日の喫煙が中心で、若い層は時々の喫煙のほうが多いという、頻度の構成の違いがある。「若者は吸わなくなった」という一文だけでは、この違いを表現できない。
公表された丸め値を用いると、若い層では毎日と時々の合計は約12%、高齢層では約10%となる。ただし、この二ポイント程度の差について統計的に有意な世代差と断言はしない。図の基礎となる概況値だけでは、合計の推計誤差を十分に比較できないためだ。ここで確実に伝えられるのは、毎日かどうかを基準にした見え方と、時々も含めた見え方が違うという点である。
この図は、一人の若者が年を取ると毎日吸うようになることを示してはいない。異なる世代の人を同じ年に調べた結果だからだ。若い層と高齢層では、これまでに育った時代も、利用できた製品も、禁煙に接した経験も違う。年齢の効果と世代の経験を切り分けるには、さらに長い追跡や繰り返し調査の分析が必要になる。
また、「時々」からは回数の多寡まではわからない。毎日の喫煙との区別を示すには役立つが、時々吸う人の一回の本数や月間の回数を、図の割合から計算することはできない。十人に一人が時々吸うという数字と、その世代が消費する本数の総量は別のものだ。図2はあくまで人の割合であり、たばこの販売本数を数えた図ではない。出典は公衆衛生庁の喫煙集計、年齢別の図3・図4である。
口腔内製品が増える世代も同じではない
スウェーデンの世代差は喫煙頻度だけにとどまらない。16〜29歳の女性で、毎日スヌースを使う割合は2018年の3%から2024年の18%へ上昇した。この数値は、たばこを含むものとニコチンパウチをまとめたスヌース使用を指す。六年間で15ポイントの増加で、丸め値を用いた倍率は六倍になる。若い女性の行動を、国全体の毎日の喫煙率だけで捉えるのが難しい理由だ。
さらに製品を分けると、同じ16〜29歳の女性の毎日のニコチンパウチ使用は2022年の10%から2024年の15%へ増えた。これはスヌース全体とは別の切り口で、葉を含まない製品に限定した値になる。前の18%とこの15%を足して33%とはしない。ニコチンパウチはスヌース全体に含まれているので、足すと同じ利用者を重ねて数えるからだ。
ここに見えるのは、従来の製品から新しい製品へ移った人だけとは限らない。新たに使い始めた人、併用する人、やめた人などの組み合わせが、集計値の差として現れている。若い女性の使用率の増加は確認できても、そのすべてが紙巻きからの置き換えだったとは言えない。同じ人の製品変更を調べる資料と、ある年の人口集団の割合を示す資料には、答えられる問いの違いがある。
この違いは消費文化を読むうえでも面白い。かつて街で目にした紙巻きの行動を中心に考えると、若い人ほど使わなくなったように映る。しかし、口腔内で使う製品まで尋ねると、若い層の別の習慣が浮かぶ。目立つ行動が減ることによって、目立ちにくい行動まで減ったと感じる。統計は、その視野の外側を拾うための記録にもなっている。
スヌースだけで、長期の低下を説明できるか
スウェーデンの喫煙減少を見て、「スヌースに替えたからだ」と理由を一つにまとめたくなるかもしれない。だが同国の公衆衛生庁は、喫煙の長期的低下と、長年の広範なたばこ予防の取り組みが同時に進んできたと説明している。公的な年表に沿うと、現在の低い割合の背景には、数十年にわたって積み重なった複数の制度がある。
同庁の年表では、1977年に警告表示と内容表示に関する法律、1993年に公共の施設や交通機関などの禁煙環境に関するたばこ法が記される。1997年には購入年齢の十八歳という条件が導入され、2005年には飲食店内の禁煙が導入された。値段だけ、広告だけ、場所だけを変えた歴史ではない。入手、利用できる場面、製品について得られる情報が、異なる時期に変わっている。
暮らしとの関係では、屋内で吸える場所が変わると、喫煙する本人だけでなく、同じ空間にいる人が煙に接する場面も変わる。この種の変化は、製品使用者の人数を数える指標とは別の生活上の側面を持つ。喫煙率という一つの結果の背後で、販売や広告の環境と、職場や飲食店の利用ルールが長く組み替えられてきたことに意味がある。
ただし、年表と喫煙率を並べたことだけでは、各制度が何ポイント低下に寄与したかまではわからない。制度が複数同時に動き、世代交代や製品選択も重なるからだ。同庁の説明も、取り組みと減少が同時期に進んだという位置づけである。本記事は、一つの制度や一つの代替製品に減少の全量を割り当てない。背景として確認できるのは、長期に続いた取り組みの具体的な履歴である。公衆衛生庁の予防策の年表に基づく。
国の違いは、製品の違いと調査の違い
米国とスウェーデンを比べると、共通するのは、従来の喫煙指標だけでは新しい製品の動きを捉えきれないことだ。一方、二か国の割合を同じランキングにそのまま並べる条件は揃っていない。米国の図1は18歳以上、スウェーデンの図2は16〜29歳と65〜84歳で、年も2023年と2024年が違う。米国の単独使用の指標とスウェーデンの喫煙頻度の指標は、対象の製品や併用者の扱いも異なる。
そこで本記事の図は、各国の中で比較を完結させた。図1では米国の同じ製品分類の二時点を比べる。図2ではスウェーデンの同じ調査年の年齢と頻度を比べる。こうすると「どちらの国が何ポイント低いか」という条件の揃わない結論を作らずに、それぞれの国で起きている構成の変化を説明できる。比較の設計そのものが、問いに対する答えを左右する。
国際比較用には、各国の年齢構成や調査を調整した別の資料もある。WHOの2025年の世界報告は15歳以上のたばこ使用について、2000〜2024年の推計と、その先の予測を区別して示す。こうした推計資料と、今回使った各国の調査結果は目的が違う。本記事は2026年の使用率を推測したり、将来の予測値を現在の観測値として図へ混ぜたりしていない。読んだ日が新しくても、数値の対象年はそれぞれの資料の年である。
もう一つ、調査の作り方の変化も残る。米国の報告は、全国健康面接調査の2019年以降の設計と重み付けの変更に注意して、それ以前との比較を行う必要があると明記している。図1の端点を結ぶ線は、その間が一定の速度で変化した証拠でもない。大きな方向を確認するための比較であって、個々の年の急変を判定するための図ではない。
集計の入れ替わりと、本人の乗り換えは違う
米国の図で紙巻きだけの割合の減少と電子たばこだけの割合の増加がともに2.9ポイントなのは、印象的だ。しかし、その数字の一致から、紙巻きだけを使っていた全員がそのまま電子たばこへ移ったとは言えない。調査は毎年の人口集団を調べるもので、図は同じ人の移行を追跡していない。成人に入った新しい世代や、使用をやめた人の動きも混ざる。
たとえば、ある年の集団にいた人が完全に使用をやめ、別の人が電子たばこを使い始めた場合も、紙巻きだけの割合が下がり電子たばこだけの割合が上がる形になる。これは説明用の可能性であり、確認された人数の内訳ではない。集計された割合の差は実際の観測に基づくが、その差を生んだ個人の経路は、別の問いとして残るのである。
製品を使う人の割合を、健康被害の割合にそのまま置き換えることもできない。今回の二つの図は、使用習慣を数える図だ。疾患の発生や死亡の変化は測っていない。使用者が同じ割合だから健康影響も同じという結論にも、煙が減ったから影響がなくなったという結論にも、この図だけでは進めない。製品の利用と健康への結果は、結びつけて調べる必要はあっても、同じ数値ではない。
スウェーデンの公衆衛生庁が紹介する、2019年までの研究を対象にした系統的レビューも、スヌースや電子たばこの使用と喫煙行動の変化を一つの単純な因果関係にまとめていない。この資料は最新製品の2024年の効果を判定するものではないが、集計で同時に動いたから原因もわかったという読み方を避ける助けになる。レビューの範囲と結論を区別して読む必要がある。
低い喫煙率の中にも、別の地図がある
国全体の平均が下がると、残っている差は見えにくくなる。CDCの2022年の紙巻き喫煙集計では、米国の低所得層は18.3%、高所得層は6.7%だった。割合の差は11.6ポイントで、低所得層の値は高所得層の約2.7倍である。これは国全体の11.6%という平均だけでは見えない違いだ。所得別の集計は、その所得区分の人の割合であり、全国人口に占める各所得層の人数ではない。
この差から、所得が一つの経路で喫煙を引き起こすと断定することはできない。生活や仕事の条件、年齢構成なども違いうる。しかし、全体の平均から各家庭の状況を想像する難しさは具体的にわかる。全国では少数派になった行動でも、周囲の人々の条件によっては身近に感じられる。国全体の煙の風景と、ある職場や地域で経験する風景が違っていても不思議ではない。
今回の記録から理解できるのは、たばこが減ったという大きな物語の中にも、違う方向の動きが重なっていることだ。米国では長期に紙巻き喫煙が減り、近年には単独使用の構成が変わった。スウェーデンでは毎日の喫煙が低い一方、時々の喫煙には別の世代差があり、若い女性の口腔内製品の利用は増えた。製品、頻度、世代という三つの窓を開くと、同じ「減少」という言葉の中身を確かめられる。
見出しの五%や一割という値は、国の暮らしを覗く入り口にはなる。その先で、誰が分母なのか、毎日だけか、別の製品も含むかを確かめると、街で感じた煙の減少を否定する必要も、すべての使用が消えたと考える必要もなくなる。煙の見える場所が減った歴史と、煙の外側に広がった利用の記録。その二つを一緒に読むことが、低い喫煙率の国の現在地を理解する方法になる。
一次資料:CDC:Tobacco Product Use Among Adults — United States, 2017–2023(2025年報告・表)、CDC:Burden of Cigarette Use in the U.S.(2022年集計と定義)、スウェーデン公衆衛生庁:Tobaksrökning i Sverige(2024年、2026年更新)、スウェーデン公衆衛生庁:Snusning i Sverige(2024年の内訳・2018年からの推移)、スウェーデン公衆衛生庁:Use of tobacco and nicotine products(2024年集計)、スウェーデン公衆衛生庁:National public health survey 2024(公式質問票)、スウェーデン公衆衛生庁:Vägen till ett rökfritt Sverige(予防策の年表)、WHO:たばこ使用率の2000〜2024年の推移と2025〜2030年の予測、第6版、スウェーデン公衆衛生庁:スヌース・電子たばこ使用と喫煙の関連(2019年までのレビュー)