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麻疹ワクチンは2回目まで届く? 世界の17%から74%への普及と地域差

世界の麻疹ワクチン接種率は2000〜2023年に2回目が17%から74%へ上昇した一方、1回目は2019年の86%を下回った。WHOの6地域で1回目と2回目の差を比較し、制度導入の広がりと接種機会の届き方を読む。2024・2025年の公表値も別に確認する。

麻疹(はしか)のワクチンは、世界でどこまで届くようになったのだろう。1回目だけを見ると、普及は長く足踏みしているように見える。ところが2回目を見ると、別の歴史が現れる。世界の接種率は、2000年には1回目が71%、2回目が17%だった。2023年には、それぞれ83%と74%。2本の線の間隔は54ポイントから9ポイントへ縮んだ。

この変化は「同じ子どもが2回目に来るようになった」という話だけではない。各国が2回目を定期接種の制度へ組み込んできた歴史でもある。一方、世界平均の差が小さくなっても、最初の1回すら届かない子どもは残る。この記事では、長期の普及、感染拡大期を挟んだ後退、地域ごとに異なる取り残され方を分けて読む。

比較の土台は、WHOと米国疾病対策センター(CDC)などの研究者がまとめた、2024年公表の「世界の麻疹排除に向けた進展、2000〜2023年」の表1である。図2点はこの表の数値に統一する。その後の公表値は末尾で別に確認する。過去年の推計も更新されるため、異なる版の数字をつないで、わずかな変化を精密に論じることは避けたい。出典:CDC・WHO共同報告、表1と方法

2回目の急上昇は、制度が世界へ広がった記録

世界の1回目接種率は2000年の71%から2019年の86%まで15ポイント上昇した。同じ期間、2回目は17%から71%へ54ポイント上昇している。2回目の線のほうが急なのは、すでに広く行われていた1回目を改善する動きに加え、新たに2回目を制度へ導入する国が増えたからだ。報告は、2回目の接種率の伸びが主として制度への導入によるものだと説明している。

2回目を提供する国は、2000年の95か国から2023年の190か国へ増えた。ほぼ2倍である。ここでの国数は制度の有無、接種率は対象となる子どものうち実際に接種した割合で、違うものを数えている。制度を導入した国が増えても、すべての家庭に接種機会が届くとは限らない。2023年の190か国という広がりと、世界の接種率74%という水準が並ぶこと自体が、その距離を示している。

2000年の2回目接種率17%は、「1回目を受けた子どものうち17%しか戻らなかった」という意味ではない。2回目を定期接種で提供していなかった国も含めた世界全体の普及水準である。1回目を受けられたのに2回目を逃した子どもと、制度上そもそも2回目の定期接種がまだ用意されていなかった子どもを、この数字だけで区別することはできない。

この違いは、世界の健康統計で起こりがちな読み違いを解いてくれる。利用率が上がると、すぐに住民の意識が変わったと考えたくなる。しかし、新しいサービスが制度として始まれば、意識の変化とは別に数字は上がり得る。麻疹の2回目の普及を読むときは、家庭の行動と、提供される機会の拡大を一緒に考える必要がある。

世界の麻疹ワクチン接種率:1回目と2回目。定期接種の対象児に占める接種者(%)。数値は直後の表で確認できます。
図1 世界の麻疹ワクチン接種率:1回目と2回目。対象:2000〜2023年(表に掲載された7時点)。単位:定期接種の対象児に占める接種者(%)。WHO全地域の定期接種推計。1回目と2回目では対象年齢が異なり、同じ子どもの追跡ではない。追加的一斉接種・流行対応接種は別扱い。2000・2016・2019・2020・2021・2022・2023年のみを使用し、間の年を補間して数値化しない。年の間隔は不均等。掲載時点に欠測はない。2024年公表報告の版に固定し、後年公表値は接続しない。 出典:資料1
グラフの数値を表で読む
国・年1回目2回目
20007117
20168567
20198671
20208371
20218171
20228373
20238374

図1は表に掲載された7時点を示す。2000年、2016年、2019年の間隔はそろっていないため、線の各区間が同じ年数を表すわけではない。世界の2回目接種率は2016年に67%、2019年に71%へ達した。その後は2020年と2021年も71%、2022年に73%、2023年に74%となる。長期の大きな前進と、直近の足踏みが一枚に重なる。出典:共同報告、表1・接種活動

「差が縮んだ」年に、1回目は後退していた

1回目と2回目の差は、2019年の15ポイントから2021年の10ポイントへ縮んだ。この部分だけを見れば、2回目への接続が改善したように見える。だが内訳は、2回目が71%のままなのに、1回目が86%から81%へ5ポイント下がったというものだった。差の縮小は、両方が良くなる場合にも、上にあった数字が下がる場合にも起きる。

2021年の1回目81%は、報告によれば2008年以来の低水準だった。新型コロナウイルス感染症の世界的大流行を挟み、1回目の接種率は2019年から2021年にかけてWHOの6地域すべてで低下した。世界全体では2022年に83%へ戻ったものの、2023年も83%にとどまった。2019年と2023年の比較では、まだ3ポイント低い。

対照的に、2回目は2019年の71%を2023年には3ポイント上回っている。したがって「コロナ前に戻ったか」という問いも、どの回を指すかで答えが分かれる。1回目には回復の遅れが残り、2回目には制度拡大と接種率改善の積み重ねがある。一つの病気のワクチンでも、普及を一つの線にまとめると、異なる動きを見落としてしまう。

ただし、この差を同じ子どもたちの追跡結果として解釈してはいけない。1回目と2回目は接種する年齢が異なり、国の接種日程によっても対象が違う。ある年の1回目83%と2回目74%の差9ポイントは、世界の二つの接種指標の差である。「その年に1回目を受けた子どもの9%が、2回目を受けなかった」とは計算できない。

地域の平均を開くと、二つの届きにくさが見える

2023年のアフリカ地域は1回目70%、2回目49%だった。西太平洋地域は92%と90%、欧州地域は95%と91%。2回目の到達水準だけでも、アフリカと欧州の間には42ポイントの差がある。世界の2回目74%という平均値は、半数に満たない地域と9割前後の地域の中間に位置する。

図2では、同じ表から「1回目の接種率から2回目の接種率を引いた差」を計算した。アフリカ21ポイント、米州10ポイント、東地中海6ポイント、欧州4ポイント、南東アジア6ポイント、西太平洋2ポイントである。ここで測るのは、接種した人数そのものでも個人ごとの脱落率でもなく、二つの定期接種指標の開きだ。

1回目と2回目の接種率の差:6地域比較。1回目−2回目(パーセントポイント)。数値は直後の表で確認できます。
図2 1回目と2回目の接種率の差:6地域比較。対象:2023年。単位:1回目−2回目(パーセントポイント)。WHOの6地域区分。差は2種類の接種率の引き算であり、同じ子どもの脱落率ではない。対象は定期接種で、1回目と2回目の対象年齢は国の日程により異なる。地域平均の到達水準そのものを表す棒ではない。全地域で両方の数値があり、欠測・補完はない。2024年公表報告の地域構成・推計版を使用。 出典:資料1
グラフの数値を表で読む
国・年接種率の差
アフリカ21
米州10
東地中海6
欧州4
南東アジア6
西太平洋2

アフリカ地域では、1回目自体が70%という課題に、2回目との21ポイントの開きが重なる。対して西太平洋地域では差は2ポイントと小さいが、2回目90%は、流行を防ぐために各地域社会で必要とされる95%の接種水準には届かない。「2回目との差を埋める」という問いと、「全体の到達水準を上げる」という問いは、似ていても別である。

東地中海と南東アジアは、差が同じ6ポイントでも状況が違う。東地中海は1回目79%、2回目73%。南東アジアは91%、85%で、どちらも12ポイント高い。図2の棒の長さが同じでも、接種機会の広がりが同じとはいえない。差を示す図は、元の二つの割合と組み合わせて初めて意味を持つ。出典:共同報告、表1の各地域2023年行

アフリカの前進と、米州の後退を同じ時間で比べる

地域の順位を固定したまま眺めると、低い地域はずっと停滞しているように見える。だがアフリカ地域の2回目は2000年に5%、2019年に33%、2023年に49%だった。23年間で44ポイント上がり、2019年からの4年間だけでも16ポイント上昇している。2023年の水準が低いことと、普及が進んでいないことは同じではない。

一方、米州の1回目は2000年の93%から2019年の87%、2023年の85%へ下がった。2回目は同じ3時点で65%、72%、75%である。アフリカでは低い出発点からの普及が続き、米州では先に広がっていた1回目の水準を保つ難しさが見える。世界の2本の線は、こうした逆向きの地域の動きを合成したものだ。

西太平洋地域の2回目は2000年に2%だったが、2016年には93%に達している。この飛躍も、2回目の制度導入が世界全体の上昇を押し上げたという説明と合わせて読むべきだ。低かった出発点を、当時の住民のワクチンへの態度だけで説明することはできない。2023年は90%で、2016年の水準を下回っていた。

これらはWHOの地域区分による集計であり、国の単純平均ではない。また、アフリカ地域はアフリカ大陸全体、欧州地域は欧州連合と同じ範囲ではない。表に含まれる国数も、アフリカは2000年46か国・2023年47か国、欧州は52か国・53か国と変わる。長期比較では、地域名が同じでも集計対象が完全に固定されているわけではないことを押さえておきたい。

欧州の1回目95%でも、地域全体は一様ではない

欧州地域の2023年の1回目接種率は95%だった。だが同じ表では、1回目の接種率が95%以上の国は、地域の国数の55%にとどまる。95%という地域平均と、55%という国の割合は矛盾しない。前者は子どもの接種状況を地域全体でまとめた数値、後者は各国を一つずつ数えた達成状況だからだ。

さらに、国の平均値の内側にも地域差がある。全国で高い水準でも、接種を受けていない子どもが特定の地区や集団に集まれば、その場所の感染のつながりを全国平均では表せない。WHOとUNICEFが接種水準を「すべての地域社会」で高める必要を強調するのはこのためである。世界、地域、国、生活圏のどこまで拡大して見るかで、見える穴の大きさが変わる。

欧州地域の報告患者数は2022年の852人から2023年の5万5589人へ増えた。これは医療機関や監視制度などを通じて報告された件数であり、すべての感染を捕捉した数ではない。それでも、1回目の地域平均が高いことだけを根拠に、流行の余地がないと考えることはできないと分かる。2回目の水準、過去に接種を逃した世代、地域内のばらつきを併せて見る必要がある。

ここから特定の国の政策や親の判断だけを、患者増加の原因だと断定することもできない。表は接種率と報告患者数を示すが、個々の流行がどこから始まり、誰の接触で広がったかを追跡したものではない。国別・地区別の疫学調査なしに原因を一つへ絞るのは、平均値から生活の現場を推測する飛躍になる。出典:共同報告、表1と限界、WHO・UNICEF発表

なぜ1回で終わらないのか

2回接種という仕組みには、1回目を逃した子どもへもう一度接点をつくる意味と、1回目だけでは免疫が十分につかなかった子どもを守る意味がある。WHOは、1回目で全員が免疫を獲得するわけではないことを、2回接種を推奨する理由として説明する。したがって、1回目の接種率が高くても、2回目は単なる上乗せのおまけにはならない。

接種率は免疫を持つ人の割合そのものではない。接種後の免疫のつき方に加え、過去の感染歴も免疫の有無に関係する。また、図の対象は各年の定期接種の対象者であり、乳幼児から高齢者まで全住民を調べたものではない。接種率から直接、現在の住民のうち感染し得る人が何人いるかを逆算することはできない。

定期接種の外側にも接種活動がある。共同報告によると、2023年には37か国で約1億1200万人が追加的な一斉接種活動を通じて麻疹ワクチンを受け、別に14か国で約940万人が流行対応の接種を受けた。これらの人数は、図の定期接種率へそのまま足し込めない。対象年齢や人数の分母が違い、同じ人の接種が重なる可能性もあるからだ。

家庭から見ると、接種は一度の受診かもしれない。統計から見れば、その機会を毎年新たに対象年齢になる子どもへ繰り返し提供する仕組みである。ある年に取り逃した子どもが、翌年の新しい対象者に自動で含まれるとは限らない。定期接種と、過去の未接種を埋める追加活動が分かれていることは、年ごとの接種率が改善しても過去の穴が消えない理由を理解する助けになる。出典:WHO、麻疹の予防、共同報告、接種活動

接種を逃す背景を、意思だけで説明しない

2023年、定期接種で1回目を受けなかった子どもは世界で2220万人と推計された。世界の接種率83%は、こうした人数の広がりを背後に持つ。ただし、この子どもたち全員があらゆるワクチンを一度も受けていないわけではない。「麻疹の1回目を受けていない」と、「予防接種にまったく接点がない」を混同すると、必要な支援の姿まで違って見えてしまう。

同じ報告では、1回目の接種率は低所得国64%、中所得国86%、高所得国94%だった。また、脆弱性や紛争などを抱える国では67%、そうでない国では89%だった。所得だけで結果が決まるわけではないが、医療サービスが利用できる条件と接種状況に大きな隔たりがあることは明確である。

UNICEFとWHOの2025年の発表も、接種機会を逃す要因として、サービスへのアクセスの制限、供給の中断、紛争や不安定化、誤情報を挙げている。診療所まで行けないこと、予定どおり供給されないこと、受診を避けることは、同じ未接種という結果になっても違う経路だ。地域の接種率の棒だけから、どの経路が主因かを決めることはできない。

生活との接点はここにある。2回目まで届く仕組みは、ワクチンを確保するだけでは完成しない。必要な年齢で医療サービスに再び接点を持てることが含まれる。ただし本稿の集計には、通院時間や予約の取りやすさなどの家庭別データはない。それぞれの負担が何ポイントの差を生んだかは示せない。数字で確認できるのは、制度の普及が進んでもなお、対象者への到達に大きな地域差が残ったということだ。出典:共同報告、接種活動、WHO・UNICEF発表、接種機会を妨げる要因

2024・2025年の公表値は、どこまで進んだか

図の最終年以降についても確認しておこう。WHOとUNICEFが2025年に発表した2024年の世界の接種率は、1回目84%、2回目76%だった。さらに、2026年7月更新のWHOの予防接種資料では、2025年は1回目84%、2回目77%となっている。2回目の普及が進む一方、1回目は2019年の86%を下回るという構図は、この公表値でも続いている。

2025年の二つの割合の差は7ポイントで、2000年の54ポイントよりずっと小さい。それでも2回目77%は、各地域社会で流行を防ぐために求められる95%という水準から18ポイント離れている。2本の線が近づくことと、高い水準でそろうことは違う。長期の接近だけを見れば成功、到達水準を見れば未達という二つの評価は、両立する。

この補足は図1の系列へ継ぎ足していない。図は2024年公表報告の推計、補足はそれぞれ後年の公表値であり、推計の版が異なるためだ。WHOとUNICEFの推計では、国の報告や人口推計などの更新によって、過去の数字も修正される。年ごとの小さな増減を厳密に比較するなら、同じ最新版で全期間を取り直す必要がある。本稿は、同一報告で確かめられる長期と地域の構造を中心に据えた。出典:2024年値の発表、WHO、2025年の接種状況

同じ2000〜2023年でも、1回目の上昇は12ポイント、2回目は57ポイントだった。二つの差が45ポイント縮んだのは、この伸び方の違いを表している。ただし、改善幅の大きさだけで優劣をつけるのも適切ではない。出発点が低い指標には制度導入による大きな上昇の余地がある一方、すでに広く届いている指標では、残った未接種者へ到達する難しさが問われる。1回目の伸びが小さいことを、2回目より重要性が低い証拠と読むことはできない。まず接点を持てることと、必要な接種を完了できることを、別々の指標として確認する意味がある。

数字が教えるのは、普及と維持が別の仕事だということ

接種率の元になる情報にも限界がある。共同報告は、接種回数と対象人口から計算する行政データ、国の推計、接種率調査などを組み合わせた推計を使う。対象人口が正確でなかったり、接種記録が十分でなかったりすれば、割合にも誤差が生じる。小数点以下まで精密な実測値として受け取るべき数字ではない。

加えて、1回目は原則として1歳児、1歳以降に1回目を接種する国では2歳時点の子どもが評価対象となる。2回目は国の接種日程で推奨される年齢が対象である。図2の地域差には、医療サービスへの到達だけでなく、異なる日程や対象年齢を集計する性質も含まれる。同じ年の割合を引けても、同じ出生年の子どもの行動を追った結果にはならない。

それでも、大きな変化ははっきり見える。世界の2回目は17%から74%へ広がり、それを支える制度も95か国から190か国へ増えた。一方、1回目は2019年の水準を2023年に取り戻せず、アフリカ地域の2回目は49%、欧州は91%という隔たりが残った。新しい接種機会を増やすことと、すでにある機会を毎年途切れさせず届けることは、違う課題だった。

麻疹ワクチンの記録をたどると、世界は「1回目はどれほど広がったか」だけでは説明できないと分かる。2回目が制度として広がった時間、最初の接点から届かない子ども、地域平均の内側に残るばらつきが重なっている。2本の線の間隔が縮んだ歴史を知ることは、予防接種が普及したという言葉の中に、何が達成され、何が残っているのかを具体的に読むことなのである。

一次資料:CDC・WHO等:Progress Toward Measles Elimination — Worldwide, 2000–2023(表1・方法・接種活動)、WHO・UNICEF:Global childhood vaccination holds steady, yet over 14 million infants remain unvaccinated(2024年値、2025年発表)、WHO:Immunization coverage(2026年7月更新、2025年値)、WHO:Measles(2026年7月更新、2回接種・免疫・予防の説明)

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