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出生登録があっても証明書がない? 世界の5,500万人とアフリカの15年を読む

UNICEFの2024年版資料では、世界の5歳未満児の出生登録率は約15年間で63%から77%へ上昇したが、登録済みでも証明書がない子どもは約5,500万人いた。アフリカ4地域の2008〜2023年の推移、6地域の証明書保有との差、タンザニアなどの窓口改革から、登録と書類の入手が別の段階になる理由を読む。

子どもが生まれたことを役所の台帳に残す。それだけの手続きが、世界のどこでも同じように済むわけではない。UNICEFの2024年版報告書では、出生登録がある5歳未満の子どもは世界の77%。約15年前の63%から割合は上がった。しかし、出生証明書を持つ子どもは69%にとどまる。登録されたことと、それを家族が書類で証明できることの間に、もう一つの段差がある。

この段差にいるのは、約5,500万人の子どもだ。登録自体のない約1億5,000万人と合わせると、出生証明書のない5歳未満児は約2億500万人になる。登録率だけを眺めていると、このうち5,500万人の存在が見えにくい。アフリカの地域別の推移と、タンザニアなどで変わった手続きを辿ると、子どもの数を数える統計が、家族の移動時間や一枚の紙の受け取り方とつながっていることがわかる。

「生まれた人数」と「登録された子ども」は違う

この記事で中心にするのは、UNICEFが2024年12月に公表した『The Right Start in Life』の比較である。2026年11月2日に資料を検索・確認したが、以下の数値を2026年の実測値とは扱わない。同報告書の現在水準は主に2014〜2023年の各国の利用可能な最新資料から集計されている。地域別の過去との比較も、各年の世界一斉調査ではなく、複数年の調査を整理した推計だ。年の表示と実際の観測期間の関係は、後で確認する。

出生登録とは、法令に従って公的な登録官が出生の発生と特徴を民事登録簿に記録することを指す。病院が出産を把握しただけでは、その手続きが完了したとは限らない。報告書は、出生の申告、登録官による登録、出生証明書の交付を区別している。医療機関などから出生を知らせる通知も、法的な登録そのものとは別の段階である。健診や予防接種のカードを持っていても、それが出生証明書とは限らない。

国連のSDG指標16.9.1の分母は5歳未満の子ども、分子はそのうち公的機関に出生が登録されている子どもだ。年間の出生数を数える出生率や、女性が生涯に産む子どもの数を表す合計特殊出生率ではない。例えば、出生後しばらくしてから登録された子どもも、調査時点で5歳未満なら登録済みに含まれうる。国連統計部の指標メタデータも、一定期間の出生のうち何件が登録されたかという行政統計と、5歳未満児の調査では、対象と時間の取り方が異なると説明している。

アフリカを一色にすると消える、41%と88%の差

世界の登録率は、報告書の時系列では2008年ごろの63%から2023年の77%へ、14ポイント上昇した。だが、その77%をどの地域にも当てはめることはできない。2024年版の地域集計では、中南米・カリブ海は95%、東・東南アジアは94%、中央・南アジアは78%、サハラ以南アフリカは51%だった。世界平均に近い地域と、ほぼ全員に届いている地域、半数にとどまる地域が共存する。

さらにサハラ以南アフリカの内側にも大きな違いがある。図1では東部、中部、西部、南部の4地域を比べた。2023年の東部と中部はいずれも41%だが、西部は63%、南部は88%に達する。南部と東部の差は47ポイント。同じ大陸という括りよりも、登録制度が生活のどこに置かれ、いつ拡張されてきたかが問われる数字である。

出生登録率の15年、アフリカ4地域の違い。5歳未満児に占める割合(%)。数値は直後の表で確認できます。
図1 出生登録率の15年、アフリカ4地域の違い。対象:2008・2013・2018・2023年(期間集計の代表年)。単位:5歳未満児に占める割合(%)。5歳未満児。2008・2013・2018は各々2005〜09・2010〜14・2015〜19年、2023は各国最新値。UNICEFの比較可能な121か国による地域推計。途中の欠測は同報告書が前後の中間値で補い、観測期間の外は横ばいと仮定。記事独自の補間なし。中部と南部はそれぞれMiddle AfricaとSouthern Africaを指す。 出典:資料1
グラフの数値を表で読む
国・年東部アフリカ中部アフリカ西部アフリカ南部アフリカ
200831394276
201335355580
201836406087
202341416388

図1の4時点は2008、2013、2018、2023年という代表年で表示した。東部は31、35、36、41%、中部は39、35、40、41%、西部は42、55、60、63%、南部は76、80、87、88%。2008年ごろからの上昇幅は、西部21ポイント、南部12ポイント、東部10ポイント、中部2ポイントとなる。中部は途中に低下と回復があり、同じ41%へたどり着いた東部と同じ軌跡ではない。

西部は出発時点で南部に34ポイント離されていたが、最後の時点では25ポイント差となった。一方、南部は高い出発点からなお上昇している。低水準だから自然に速く追い付くわけでも、高水準ならもう変わらないわけでもない。ただし、この折れ線だけではどの政策が何ポイント分を生んだかは決められない。人口規模の大きな国の動きが地域集計に強く反映されるため、次に国別の手続きの変化を重ねて読む必要がある。

コートジボワールは登録96%、でも証明書は約半数

西部アフリカの伸びを具体的に見る例がコートジボワールだ。報告書によると、5歳未満児の出生登録率は2012年の65%から2021年の96%へ上昇した。9年間で31ポイントの増加である。その背景として、妊産婦と新生児への保健サービスや予防接種に出生登録を組み込み、公的な医療施設で登録しやすくしたことが挙げられている。保健・司法・内務の各省による2017年の覚書と、2018年の民事登録に関する法律も、報告書が示す制度上の変化だ。

ところが、同じ報告書は、この国で出生証明書を持つ5歳未満児は依然として約半数だと記している。96%という登録率を見て「ほぼ全員が出生を証明する書類を手元に持つ」と読み替えると、実情を取り違える。登録を進める入口の改善と、家族が証明書を入手できるまでの改善は、別々に確かめる必要がある。この国の例は、世界の77%と69%という差を、単なる統計上の小さなずれとして済ませられない理由になる。

シエラレオネにも異なる経路がある。登録率は2008年の5割強から2010年には8割近くへ上がり、2019年には90%に達した。報告書は、保健省と国家民事登録機関が2018年に覚書を交わし、公的医療施設で生まれた子どもの登録を医療担当者の役割にしたことを説明している。登録サービスのある施設は2018年の1,123か所から2020年の1,459か所へ増えた。ただし、2018年の仕組みを、それ以前の2008〜2010年の急上昇の原因として説明することはできない。制度の年と数値が変わった年を分けて読むと、改善が一度の改革で終わるものではないことが見える。

「登録済み」の先に残る、証明書の空白

図2では指標を切り替え、登録されたと報告されているのに出生証明書を持たない子どもが、5歳未満児全体の何%いるかを示す。登録済みの子だけを分母にした割合ではない。サハラ以南アフリカと中央・南アジアはいずれも12%、北アフリカ・西アジアは8%、東・東南アジアは4%、中南米・カリブ海は3%。豪州・ニュージーランドを除くオセアニアは11%だった。いずれも報告書の図1に掲載された整数の割合である。

登録済みでも出生証明書を持たない子ども。5歳未満児全体に占める割合(%)。数値は直後の表で確認できます。
図2 登録済みでも出生証明書を持たない子ども。対象:2024年版集計(主に2014〜2023年の最新資料)。単位:5歳未満児全体に占める割合(%)。分母は登録済み児ではなく5歳未満児全体。オセアニアは豪州・ニュージーランドを除く。原資料の整数公表値を使用。出生登録と証明書保有の資料がそろわない国については、UNICEFが資料のそろう国の比率を用いて地域集計を調整。独自補完やゼロ置換なし。 出典:資料1
グラフの数値を表で読む
国・年登録済み・証明書なし
サハラ以南アフリカ12
中央・南アジア12
北アフリカ・西アジア8
東・東南アジア4
中南米・カリブ海3
オセアニア(豪NZ除く)11

同じ12%でも、残りの内訳は違う。サハラ以南アフリカは、証明書を持つ子が39%、登録済みだが証明書がない子が12%、未登録が49%である。中央・南アジアは、それぞれ66%、12%、22%だった。未登録を減らす課題の大きさは違う一方、登録を終えても証明書のない層が全体の1割強いる点は共通する。「出生登録が不足している」という一文では、この二つの状態の違いを伝えきれない。

ここから、登録済みの子どもに限った割合も概算できる。サハラ以南アフリカでは12を51で割り、約24%。中央・南アジアでは12を78で割り、約15%となる。つまり公表された丸め済み数値で計算すると、前者では登録済みの約4人に1人が証明書を持っていない。これは元の個票を再集計した精密な推計ではなく、図の整数から計算した目安である。図2の棒自体にはこの計算値を使わず、全児童に占める割合をそのまま使った。

世界全体の内訳は、証明書あり69%、登録済みで証明書なし8%、未登録23%である。出生証明書のない子どもの推計人数が約2億500万人になるのは、最後の二つを合わせるからだ。8%と23%は別々の状態であり、5,500万人を1億5,000万人の内数として扱わない。割合も人数も丸められているため、この図から逆算した世界の5歳未満人口を、別の人口統計の精密な値として提示することもしない。

タンザニアで変わったのは、窓口までの道のりだった

東部アフリカのタンザニアは、手続きの設計がどう変わったかを追える例である。2024年版報告書では、登録率は1999年の約10%から2016年の26%へ上がり、2022年には60%超となった。ここで挙げるのは国全体の登録率の推移である。他方、事業の窓口数や展開地域は、島しょ部を含む全領域ではなく本土の制度を説明した数値だ。対象範囲をそろえず、窓口増加と全国の登録率を一対一の効果測定として結び付けることはできない。

本土では、出生登録を担うRITAが分散型の簡素な制度を展開した。UNICEFタンザニア事務所のキゴマ地域への展開を説明する一次資料によれば、それまで郡の中心部に限られていた登録窓口を、母子保健サービスを提供する施設や地域の行政窓口へ広げた。家族が身近な場所へ一度出向いて登録を済ませる方式で、事業では登録手数料が免除され、最初の出生証明書も無料で交付される。紙を受け取る最後の段階まで手続きに組み込んだ点が、登録件数を増やすだけの話と違う。

2024年版報告書に載る本土の登録拠点数は、2013年の97から2024年の1万1,376へ増えた。単純に割れば約117倍だ。これは子どもが117倍登録されたという意味ではない。窓口の配置が大きく変わったことを示す供給側の数値である。親は近隣の保健施設で、登録に加えて予防接種や栄養サービスを一度の訪問で利用できる。交通費だけでなく、仕事や家事を中断して別の日に役所へ行く負担を減らす仕組みとして読むと、拠点数の変化が暮らしの問題として見えてくる。

データの送信には携帯電話も使われるが、家族全員が自分のスマートフォンで申請することと同義ではない。タンザニア事務所の説明では、保健施設や地域の行政窓口に端末を備え、登録情報を中央のデータベースへ送る仕組みである。利用者が近隣の窓口で手続きを済ませ、行政側が情報を送れることが一組になっている。「デジタル化したから伸びた」とだけ説明すると、窓口の増設、無料化、証明書交付の簡素化という同時の変化を見落とす。

幼児までには登録できても、生後すぐとは限らない

年齢を変えると、もう一つの違いが現れる。報告書の世界集計では、5歳未満児の登録率77%に対し、1歳未満では71%だった。証明書保有率も、5歳未満の69%に対し1歳未満では59%。より幼い時期には、手続きがまだ届いていない層が厚い。同報告書が推計する未登録の1歳未満児は約3,700万人で、登録済みだが証明書がない乳児は約1,600万人だった。

ただし、5歳未満と1歳未満の6ポイント差から「全ての子どもが1歳を過ぎると6ポイント分追加登録される」とは言えない。二つは同じ子どもを追跡した調査ではなく、年齢集団も利用できる国の資料も異なる。5歳未満の登録の集計は173か国で世界の対象人口の98%を覆う一方、1歳未満は162か国で90%だった。ここから確かに読み取れるのは、幼児全体の高い率を、そのまま生後早期の登録の達成度として扱えないということだ。

また、出生証明書は年齢の裏付けになる。国連のメタデータは、教育・医療へのアクセスに加え、年齢に満たない就労や結婚の問題、成人後の就業、財産の相続、旅券の取得などとの関係を挙げている。個々のサービスの要件は国により違うため、書類がない全員が必ず利用を拒まれるという意味ではない。それでも、政府の記録に名前があるかという問題と、日常の手続きで本人がその記録を示せるかという問題が分かれる理由はここにある。

貧しい世帯ほど「無料の手続き」にも費用がかかる

登録率の地域差には、国内の生活条件の差も重なる。報告書では、南アジアの豊かさが上位20%の世帯の子どもは87%が登録されていたのに対し、下位20%では64%だった。差は23ポイントである。世界全体では、母親に中等教育以上の学歴がある場合の登録率は83%、母親が教育を受けていない場合は66%で、17ポイントの差があった。これらは同じ時点の条件を統制した政策効果ではなく、世帯や母親の属性別の集計である。

UNICEFは、手数料がなくても、窓口へ向かう旅費や機会費用が登録の障壁になりうると説明している。例えば一度の訪問で済まない制度では、親が仕事を休んで移動する回数が増える。これは資料が挙げる費用の構造を説明した例であり、特定の国の親が平均何日休むかを測った数値ではない。タンザニアで保健施設と登録を結び付けた意味は、登録料という一つの価格を下げるだけでなく、日常の受診に手続きを近づけたことにある。

情報の壁もある。関連データのある51か国では、未登録の子どもの母親・養育者の53%が登録方法を知らないと答え、47%は方法を知っていた。これは世界の全ての親の53%という数字ではない。また、知らない人へ案内を届けるだけでは、すでに方法を知りながら登録に至っていない人の事情は解決しない。窓口への距離、費用、必要書類、法的条件を変える取り組みと、手続きを知らせる取り組みの両方が、具体的な統計の内訳から必要になる。

4つの年は、4回の一斉調査を意味しない

最後に図1の時間軸へ戻ろう。報告書の地域別推移は、約20年間に比較可能な資料が2点以上ある121か国を対象とする。この国々が覆うのは、世界の5歳未満人口の88%だ。2008、2013、2018という表示は、それぞれ2005〜2009、2010〜2014、2015〜2019年の期間をまとめた比較点に対応し、最終点は各国の最新資料に基づく。したがって、図の2023年という表示は全ての国で2023年に調査したことを意味しない。

同じ期間に一つの国の値が複数あれば、その単純平均を使い、地域集計では子どもの人口による重み付けをする。途中の期間が欠ける場合は前後の値の中間点で補い、資料が存在する期間の前後は変化なしと置く。この記事はその報告書の公表値を転記し、独自の補間を追加していない。図1の線は毎年観測した連続記録ではなく、こうした条件で整えた4時点の比較である。

現在水準の地域集計では、出生登録の資料に比べて証明書保有の資料が少ない国もある。報告書は、4種類の指標を比較できるよう、全指標がそろう国の比率を使って地域・世界の集計を調整している。また、一部の高所得国では民事登録のカバー率に基づき、全児童が証明書を持つと仮定する。保護者の回答には、出生証明書と保健カードを取り違える可能性もある。図2は各家庭の書類を世界中で同じ方法により直接確認した結果ではない。

それでも、比較から見える構造は具体的だ。西部アフリカでは約15年間に登録率が21ポイント伸びた。コートジボワールでは登録が96%に達しても、証明書保有は約半数にとどまった。タンザニア本土では窓口が97から1万1,376へ増え、登録と証明書交付を一度の訪問に近づけた。出生登録の広がりを知るには、子どもの名前が台帳に載る入口と、その記録を家庭が使える書類にする出口の両方を辿る必要がある。

数値の出典は、UNICEF『The Right Start in Life: 2024 update』の図1・3・4・6・7・9、地域別解説および技術注記、ならびに国連統計部のSDG指標16.9.1メタデータである。割合の差はパーセントではなくポイントで表示した。丸め済み値による独自計算は本文に明記し、2026年の状態への外挿や将来の確定予測には用いていない。

一次資料:UNICEF, The Right Start in Life: Global levels and trends in birth registration, 2024 update(UNICEFベルギー掲載PDF)、国連統計部 SDG指標16.9.1メタデータ(2025年3月28日更新)、UNICEFタンザニア事務所 キゴマ地域への簡素な出生登録制度の展開

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