日本の食品ロスは減った。しかし、家庭と事業者が同じ方向へ進んだわけではない。2024年度の発生量は約461万トンで、前年度の464万トンから3万トン減った。内訳を見ると、家庭からは233万トンから224万トンへ減る一方、事業者からは231万トンから237万トンへ増えている。全国の合計だけでは見えない、二つの逆向きの動きが重なっている。
これは2026年6月30日に環境省、農林水産省、消費者庁が公表した2024年度の推計である。公表された年と、食品が捨てられた対象年度は異なる。本稿では2026年10月16日に確認した資料を使い、詳しい推計が続く2012年度以降を辿る。食品ロスの減少がどこで起き、現在どこに残っているのか。家庭の冷蔵庫と、売り場に届く前の流通を、一つの記録の中でつないでみたい。環境省の公表資料に、年次別の数値が掲載されている。
461万トンは、生ごみ全部の重さではない
最初に、数えている物を決めよう。日本の行政資料がいう食品ロスは、本来食べられるのに捨てられる食品である。魚の骨など通常食べられない部分まで含む食品廃棄物とは範囲が違う。同じ台所から出るごみでも、食べられない部分を除いた調理くずと、食べられる料理の残りでは、この統計での扱いが変わる。
家庭系には三つの入口がある。買った食品を料理の材料や食事として使わずに捨てる「直接廃棄」、皮を厚くむくなどして食べられる部分まで除く「過剰除去」、食卓などに提供した後で残る「食べ残し」だ。したがって、食べ残しだけをなくせば家庭の食品ロスが消えるわけではない。調理する前、調理している間、食卓に出した後という、別々の段階で発生する。
事業系は食品製造業、食品卸売業、食品小売業、外食産業の四業種に分けられる。工場の規格外品や返品、店頭の売れ残り、飲食店の作り過ぎや食べ残しが含まれる。ここで分類の軸は、捨てられた場所や事業の種類である。店で買った弁当を家で捨てれば家庭側に入り、店で売れ残れば事業者側に入る。食べ物の種類だけで分類しているのではない。環境省の別添資料2ページは、この発生場所と要因を並べて示している。
十二年で減った182万トンの内訳
図1は2012年度から2024年度までの家庭系と事業系を、同じ万トンの単位で並べたものだ。2012年度には家庭系312万トン、事業系331万トン、合計643万トンだった。2024年度には家庭系224万トン、事業系237万トン、合計461万トンとなる。公表された丸め済みの値で計算すると、合計の減少は182万トン、減少率は約28.3%である。

グラフの数値を表で読む
| 国・年 | 家庭系 | 事業系 |
|---|---|---|
| 2012 | 312 | 331 |
| 2013 | 302 | 330 |
| 2014 | 282 | 339 |
| 2015 | 289 | 357 |
| 2016 | 291 | 352 |
| 2017 | 284 | 328 |
| 2018 | 276 | 324 |
| 2019 | 261 | 309 |
| 2020 | 247 | 275 |
| 2021 | 244 | 279 |
| 2022 | 236 | 236 |
| 2023 | 233 | 231 |
| 2024 | 224 | 237 |
家庭系は88万トン減り、事業系は94万トン減った。減少量への寄与は、ほぼ半々である。率に直しても家庭系は約28.2%減、事業系は約28.4%減で、始点と終点を比べた縮小の程度はよく似ている。最近の一年では方向が分かれた二つの系列も、十二年間を通して見れば、ともに三割弱小さくなった。
ただし、二本の線は一直線には下がらない。事業系は2012年度331万トンから2015年度357万トンへ増え、その後減少した。家庭系も2014年度282万トンから2016年度291万トンへいったん増えている。長期の減少傾向とは、毎年必ず減るという意味ではない。もし2015年度の事業系だけを出発点にすれば、2024年度までの減少率は約33.6%となり、2012年度を基準にした約28.4%より大きく見える。
総量にも足踏みがある。2020年度522万トン、2021年度523万トンと、ほぼ横ばいだった後、2022年度には472万トンへ下がった。その翌年は464万トン、さらに461万トンとなる。2021年度から2022年度の減少51万トンに対し、直近の減少は3万トンだ。一年の変化の大きさを、そのまま将来へ延ばすのは難しいことが、この短い並びからも分かる。
図1には、連続する年次表で確認できる2012年度以降だけを載せた。削減目標の基準には2000年度が使われるが、そこから2012年度までの値を架空の線で埋めることはしていない。また、これらは全国の年間総重量であり、一人当たり量でも、食品の生産量や販売量に対する廃棄率でもない。人口や食事をする場所の変化も総量には関わり得るため、線の低下をそのまま一人ひとりの行動の変化と読み替えることはできない。
直近一年は、家庭の減少が事業者の増加を上回った
2023年度から2024年度に絞ると、合計の変化は「家庭のマイナス9万トン」と「事業者のプラス6万トン」を足したマイナス3万トンである。家庭系の減少率は丸め済みの値から約3.9%、事業系の増加率は約2.6%となる。全国の約0.6%減という穏やかな変化は、両者がほとんど動かなかった結果ではなく、逆向きの変化が相殺された結果だ。
事業者側の増加をさらに分けると、食品製造業は108万トンから110万トン、外食産業は66万トンから70万トンへ増えた。食品卸売業は9万トン、食品小売業は48万トンで、いずれも公表単位では前年と同じだった。丸めた内訳で見る6万トンの増加のうち、4万トンが外食、2万トンが製造である。
外食の系列は2022年度60万トン、2023年度66万トン、2024年度70万トンと上昇している。ただし2019年度は103万トンだったので、2024年度の水準はそれより33万トン少ない。「最近は増えている」と「以前より少ない」は、比べる年が違えば両立する。増えたという言葉だけでは、どの地点へ戻りつつあるのかも、以前の水準を超えたのかも分からない。
ここから、外食客が一人当たりに多く残すようになったとまでは言えない。この表には客数や提供した食事量がないからだ。食事の提供量が増えれば、一食当たりの廃棄が同じでも総量は増える。逆に一食当たりの廃棄が減っていても、総量は増える場合がある。活動量と廃棄の発生しやすさを切り分けるには別の分母が必要であり、今回の数値だけから増加の原因を一つに決めない。
店の売れ残りより大きい、売り場の手前のロス
食品ロスと聞くと、スーパーやコンビニの売れ残りを思い浮かべやすい。ところが2024年度の事業系237万トンのうち、食品小売業は48万トンで約20%だった。食品製造業は110万トンで約46%、外食産業は70万トンで約30%、食品卸売業は9万トンで約4%である。図2は、この四業種の絶対量を比較している。

グラフの数値を表で読む
| 国・年 | 食品ロス量 |
|---|---|
| 食品製造業 | 110 |
| 食品卸売業 | 9 |
| 食品小売業 | 48 |
| 外食産業 | 70 |
製造業の量は小売業の約2.3倍ある。卸売業を加えた製造・卸の合計は119万トンで、事業系の約半分を占める。つまり、買い物客が売り場で見かける前の段階にも、大きな量がある。小売店での値引きや売れ残りに目を向けるだけでは、事業系全体の大半を見落とす。
もっとも、この棒の長さは各業種の効率の順位ではない。製造業は食品をまとめて扱う量も、工程も小売業と異なる。食品の重さ当たり、売上高当たり、提供食数当たりなどの分母を置かずに、「製造業は小売業より無駄が多い業種だ」とは判断できない。図が示すのは、国内の可食部の廃棄重量がどこで発生しているかという配置である。
その配置を理解する手がかりが、農林水産省の説明する「3分の1ルール」だ。製造から賞味期限までの期間の最初の三分の一以内に、小売へ納品する商慣習を指す。その期間を過ぎると、賞味期限までまだ日数が残っていても、納品先が見つからず廃棄につながる可能性がある。消費者の手元で期限が切れる場合とは、発生の仕組みが違う。
例えば賞味期間が六か月なら、三分の一の納品期限は製造から二か月までだ。これを二分の一へ緩めれば三か月までとなり、納品できる期間は一か月延びる。これは仕組みを示す計算例であり、六か月の食品すべてに同じ条件が適用されるという意味ではない。農林水産省は納品期限の緩和に加え、賞味期限表示の年月表示化や日まとめ表示、賞味期間の延長を紹介している。商慣習の見直しに関する一次資料は、納品の条件が食品の行き先を左右する構造を説明している。
ここで押さえたいのは、家庭で食べ切る工夫と、流通で納品可能な期間を広げる工夫では、動かしている仕組みが異なることだ。ただし、全国の事業系が十二年で94万トン減ったうち、何万トンがこの商慣習の変更によるものかは、今回の年次表では分からない。制度や取組が存在することと、その効果を全国総量から数量的に確定することは別の作業になる。
家庭の中では、食卓に出る前にも捨てられる
2024年度の家庭系224万トンを分解すると、直接廃棄96万トン、食べ残し93万トン、過剰除去35万トンとなる。公表資料の割合はそれぞれ43%、41%、16%である。直接廃棄の方が食べ残しより少し大きい。食卓に出した料理を残す場面と、使う前に捨てる場面が、どちらも四割前後を占めている。
ここには暮らしとの具体的な接点がある。食べ残しは、出した食事の量と実際に食べる量の間で生じる。直接廃棄は、購入・保存した食品を食べるところまでつなげられなかった段階にある。過剰除去は、調理中に食べられる部分まで取り除くことで生じる。同じ「もったいない」でも、どの段階の量なのかを分ければ、冷蔵庫の在庫、調理方法、食事の提供量という異なる場面が見えてくる。
2023年度の内訳は直接廃棄100万トン、食べ残し97万トン、過剰除去36万トンだった。丸め済みの数値では、直近の家庭系の減少9万トンのうち、直接廃棄と食べ残しが各4万トン、過剰除去が1万トンを占める。食卓の後だけで減ったのではなく、食材を使う前の段階でも減っている。
一方、この分類を、各家庭の捨てた理由を尋ねた回答と混同してはいけない。直接廃棄という分類だけから、買い過ぎ、予定の変更、保管の失敗などの理由別の比率は出せない。発生した段階は捉えられても、なぜその食品を使えなかったかまでを、この全国推計が一括して説明するわけではない。
ごみ袋から全国の重さへ、どう推計するのか
そもそも、全国の家庭が捨てた食品をすべて集め、一つずつ量っているわけではない。事業系は食品リサイクル法に基づく報告など、家庭系は市町村への実態調査などを基に推計される。二つの系列は同じ単位で足せるが、数値が生まれる調査の入口は違う。
環境省の令和7年度実態調査報告書は、2024年度の家庭の状況を、2025年の調査で把握したものだ。報告書の年度、調査を実施した年、食品が発生した対象年度の三つがある。年表に使うのは食品が発生した2024年度であり、報告書の表紙の令和7年度をそのまま発生年にはしない。
全国推計では、市区町村が回答した食品ロス量について、推計方法を確認して使える回答を採用する。食品廃棄物に占める直接廃棄、過剰除去、食べ残しの割合も算出し、量を把握していない市区町村などには、食品廃棄物量と平均割合から拡大推計を行う。過年度の有効なデータも使われる。欠けた自治体の量をゼロとして足す方法ではない。
この方法は、家庭ごみの中身を調べる組成調査などを全国の数量へつなぐ一方、全家庭の直接計量とは異なる性質を持つ。報告書では不可食部を含む回答などを精査して除外する手順も説明されている。総量の変化には、捨てられる食品の実際の変化に加え、調査対象や推計に使われる割合の変化も関わり得る。したがって年次の線は全国推計の記録として読み、行動変容の効果を測った実験結果とは区別する必要がある。
報告書の図表41では、家庭系の合計2,235千トンのうち、採用された市区町村の推計結果を使う部分が775千トン、拡大推計による部分が1,460千トンとなっている。後者は合計の約65%を占める。これは全国の食品ロスの約65%が「不明」という意味ではなく、調査で得られた構成比などを使って量を求めた部分という意味だ。全国の重さは、自治体からの回答を単純に足すだけでは完成しない。
区分によって材料となるデータの厚みも違う。図表39で平均割合の計算に使われた市区町村数は、直接廃棄が298、過剰除去が44、食べ残しが247である。過去の調査結果も含めて計算した数で、当該年度に量を回答した自治体数とは異なる。過剰除去は、ほかの二つより少ない自治体のデータから平均割合を求めている。同じ円グラフに載る三分類でも、推計を支える観測の数まで同じではない。
さらに、家庭から排出される食品廃棄物全体の推計は2024年度6,418千トンだった。可食部の食品ロス2,235千トンをこれで割ると約34.8%となる。家庭の食品廃棄物の全量と、まだ食べられた分の量には、これだけの開きがある。この比率は全国推計の総量同士を割った値であり、個々の自治体で求めた割合の単純平均とは計算の順序が違う。家庭系224万トンを生ごみ全部の重さとして読めない理由が、具体的な二つの総量にも表れている。
丸めにも小さな落とし穴がある。報告書の詳細値では家庭系の合計は2,235千トンで、万トンに直すと223.5万トンになる。公表資料の約224万トンは、これを丸めた表示だ。前年の2,330千トンから詳細値で計算した減少率は約4.1%だが、233万トンと224万トンを使えば約3.9%となる。どちらも同じ資料群を基にしていても、表示の桁が違えば計算結果は少し変わる。
本稿の二つの図と増減の計算は、比較の桁をそろえるため、公表資料の万トン単位に統一した。家庭の内訳も96、35、93万トンという表示を用いている。より細かい資料があるからといって、全国の廃棄量をその桁まで誤差なく知っていることにはならない。数字を細かく書くことと、測定の確かさを説明することは別である。
世界の「食品廃棄」と日本の「食品ロス」は範囲が違う
世界との関係を見ると、定義の違いがさらに効いてくる。国連環境計画が2024年に公表した食品廃棄指数報告書の説明では、2022年の小売・外食・家庭段階の食品廃棄は世界で約10.5億トン、一人当たり年間132キログラムと推計されている。この量には食べられない部分も含まれる。家庭が60%、外食が28%、小売が12%という内訳である。国連環境計画の公表文が対象範囲を明記している。
日本の461万トンには食品製造業も含まれる一方、食べられない部分は含めない。世界の132キログラムは小売・外食・家庭を合わせた人口当たり量であり、日本の家庭系224万トンは家庭だけの全国総量だ。年度も2024年度と2022年で異なる。ここから日本が世界平均よりどれだけ優秀かという順位や倍率を作れば、対象の違いまで成績の違いに見せてしまう。
国連環境計画は2024年の公表時点で、2030年へ向けた進捗を追える推計があるG20諸国として、オーストラリア、日本、英国、米国の四か国と、欧州連合を挙げた。これは食品を捨てない国の順位ではなく、変化を追うためのデータがあるかという違いだ。日本の年次推計の意味も、ある年の世界順位を決めることより、同じ国内で発生場所ごとの変化を継続して点検できることにある。
「半減達成」でも、家庭の目標は残っている
最後に、減ったという評価の基準を戻してみよう。環境省の資料では、家庭系の2000年度の基準量は433万トン、事業系は547万トンである。2024年度の家庭系224万トンは、基準量から48.3%減った水準で、半減にはまだ届かない。一方、事業系237万トンは56.7%減である。同じ「半減」という言葉でも、どの区分に当てるかで達成状況が違う。
発生量全体では、資料に示された当初目標489万トンを下回っている。しかし、現在の2030年度目標は、家庭系216万トン、事業系219万トン、合計435万トンだ。事業系は2000年度比60%減という目標へ引き上げられている。2024年度の461万トンからの差は26万トンで、家庭系は8万トン、事業系は18万トンの差が残る。公表値の丸めがあるため、基準量からの単純計算と目標表示は厳密には一致しない場合がある。
二本の線を辿ると、日本の食品ロスは長期には家庭と事業者の双方で減ってきたことが分かる。ところが直近では事業系が増え、その中でも外食と製造が動いた。現在の量を開けば、事業者側では売り場の手前にも大きな塊があり、家庭側では食卓へ出す前の直接廃棄が食べ残しと同程度ある。総量461万トンという一つの数字の中に、流通の期限、調理の工程、家庭の保存、提供後の食事という違う場面が入っている。減少の記録を暮らしへ結び付ける鍵は、その重さを発生した場所まで辿ることにある。
一次資料:我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和6年度)の公表について、別添:我が国の食品ロスの発生量の推移等、事業系食品ロス量(2024年度推計値)を公表、2024(令和6)年度食品ロス量推計値の公表について、商慣習検討:納品期限の緩和等、令和7年度食品廃棄物等の発生抑制及び再生利用の促進の取組に係る実態調査報告書、World squanders over 1 billion meals a day — UNEP Food Waste Index Report 2024公表文